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しょうでんぼう／正伝法

一

伝法道場における宗脈相伝の儀礼であり、また浄土宗の伝法において最重要であるとともに深秘たる内容そのもの。まず宗脈では浅学相承と碩学相承とがあり、浅学相承は、①塗香触香焼香伝②座具伝③自証門伝④授手印伝⑤五通五箇伝⑥面上伝⑦三種病人伝⑧未回心声聞伝⑨気息伝の感誉流九箇条となる。次に碩学相承は、①宗脈已上化他門伝②都部伝③授手印伝④総口伝（総身伝）⑤凡入報土伝の感誉流五箇条となる。浄土宗では能化はこれら浅学相承と碩学相承をすべて相伝することが必須である。また結縁（化他）五重の場合は、浅学相承の伝目である感誉流九箇条から抜粋した、以下の「五箇条、他、添口伝四箇条」となる。五箇条とは、①焼香伝②座具伝③自証往生伝④授手印伝⑤十念伝であり、添口伝四箇条とは、①仏祖対面伝②知識対面伝③亡識回向伝④睡時十念伝である。次に璽書分では、①名字伝②文章伝③残紙（白紙）伝の璽書三箇口伝が伝目となる。以上が宗脈相伝の伝目であり、これらを規定の作法に則り浄土宗の伝統と教義を相伝する儀礼が正伝法である。

【参照項目】➡浅学相承・碩学相承、感誉流伝法

【執筆者：柴田泰山】

二

宗脈の最も深奥なる口伝を相伝する伝法道場のこと。これに前伝と後伝があり、前伝を要偈道場、後伝を密室道場という。前伝の要偈道場について、『法要集』（昭和一四年版）ではその次第順序を以下のように記している。「法鼓　調読　受者入堂（香水・香湯・塗香ずこう・触香そっこう・洒浄）　着座　道場洒水　喚鐘　露地偈　伝灯師入堂　右繞三匝うにょうさんぞう　大衆前後囲繞入堂着座　伝灯師釈尊前焼香三拝（受者一同坐礼）　敬礼偈・十念　伝灯師白道を踏み本尊前に到る　着座（展坐具）　香偈　三宝礼　四奉請（散華）　懺悔偈・十念　表白　伽陀　伝灯師登高座　発起焼香　授与十念（一同坐一拝）　右方制誡読誦（伝灯師より右方）　左方安心請決（伝灯師より左方）　金打きんちょう三下　洒水灌頂　伝巻頂戴　伝灯師授手印捧読　正作法　日課誓約　摂益文　念仏一会　総回向偈・十念　〈極重悪人無他方便　唯称弥陀得生極楽　如来の本誓は一毫も謬あやまりたもうことなし、願わくは仏、決定して現前の我（現前の新受者）を引接し給え〉　三唱礼　授与十念　受者白道を踏みて本尊前に礼して退堂」。この中の正作法において要偈儀規九則（①伝法の心得や重要性を訓示する「訓導」②懺悔の上で三帰三竟を行う「懺悔三帰」③『末代念仏授手印』序文を披読する「授手印序」④要偈道場の道場荘厳を解説する「道場表顕」⑤伝法の歴史を解説する「伝法由来」⑥要偈の内容を詳細に解説する「要偈細釈」⑦要偈を相伝する「伝法作法」⑧受者に日課誓約を仏前にて誓わす「授与日課」⑨伝灯師の十念による「念仏回向」）のもと、要偈の相伝が実施される。また後伝の密室道場について、同じく『法要集』（昭和一四年版）ではその次第順序を以下のように記している。「喚鐘　伝灯師入堂　仏前三拝　摂心念仏　大衆入堂　法鼓　調読　受者入堂（香水・香湯・塗香・触香・洒浄）　発起焼香（一同坐三拝）　授与十念（一同坐一拝）　正伝法　自信偈・十念　血脈授与　摂益文　念仏一会（伝灯師本尊前に転座）　総回向偈・十念　還相回向偈　三唱礼　伝灯師転向（一同三拝）　授与十念（一同坐一拝）　伝灯師退堂　大衆退堂　受者退堂」。この中の正伝法において浅学相承と碩学相承が実施される。浅学相承では感誉流九箇条の相伝が、碩学相承では感誉流五箇条の相伝が行われる。ただし伝宗伝戒道場の場合、総本山知恩院では浅学相承と碩学相承とが同一道場において、大本山増上寺では浅学相承と碩学相承は別道場（密室道場と宗脈）において相伝されている。また結縁（化他）五重の場合は、前伝の要偈道場と、後伝の密室道場が実施されるが、要偈道場では基本的には要偈儀規九則に基づき要偈の相伝が、密室道場では浅学相承を改変した「五箇条、他、添口伝四箇条」が相伝される。

【参照項目】➡要偈道場、密室道場

【執筆者：柴田泰山】

三

二巻。椎尾弁匡講述。第一輯昭和三八年（一九六三）四月、第二輯同四一年七月、共に大本山増上寺発行。椎尾弁匡が、増上寺において宗祖七五〇年忌にちなみ正伝法会を開催しその口述内容を記録した書。ただし会衆との質疑応答は録音不鮮明のために記録されていない。この正伝法会は、第一会は昭和三六年（一九六一）一〇月一三日より一六日までの四日間、第二会は同三九年一月二〇日より二三日までの四日間、第三会は同三九年一二月一日より四日までの四日間行われ、そのうち第一会が第一輯、第二会が第二輯として出版された。第三輯は未刊である。椎尾弁匡の晩年の思想、伝法の諸問題を窺い知る上で貴重な書である。

【参照項目】➡椎尾弁匡

【執筆者：大蔵健司】