荘厳
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうごん/荘厳
一
ⓈvyūhaⓈalaṃkāraに対応する訳語。前者には飾り、配列、(戦場での)陣形布陣などの意味がある。後者には装飾の意味があり、梵語文学修辞法の一種でもある(例として『現観荘厳論』『大乗荘厳経論』など)。またⓈvyūhaは浄土教とも関係深い語で、『無量寿経』『阿閦仏国経』には共に「仏国土の功徳荘厳は特別の誓願(別願)によって成就する」と説かれ、仏国土を誓願成就の果報、さらには仏威神力によって生じた荘厳の総体として捉えている。その荘厳は往生以前には人々の憧憬対象となり、往生後には修行を促進させ、成仏に向かわせる理想的な仏道環境となる。世親の『往生論』には、極楽世界の荘厳が三種二十九句でまとめられる。ちなみにこの諸荘厳は『摂大乗論』十八円満との関係が指摘されている。三種二十九句のうちわけは仏国土功徳荘厳(一七種)、仏功徳荘厳(八種)、諸菩薩功徳荘厳(四種)で、これらの荘厳は一法句におさめられ、その一法句は「真実智慧無為法身」とされる。
【参考】梶山雄一「浄土の所在」(『渡辺文麿博士追悼記念論集 原始仏教と大乗仏教』下、永田文昌堂、一九九三)、袴谷憲昭・荒井裕明『大乗荘厳経論』(『新国訳大蔵経』瑜伽・唯識部一二、大蔵出版、一九九三)、村上真完「極楽の荘厳(vyūha)」(『髙橋弘次先生古稀記念論集 浄土学仏教学論叢』二、山喜房仏書林、二〇〇四)
【参照項目】➡入一法句
【執筆者:中御門敬教】
二
美しく厳かに飾ること。極楽浄土の荘厳から転じて、本堂内の荘厳とその荘厳具をいう。本堂内の荘厳は「三経一論」と「観無量寿経変相図」などに基づいて配置される。本堂内の須弥壇・天蓋・華鬘・高座などすべてが荘厳具である。仏華・供養物を始めとしたすべての飾り付けは、「信は荘厳より生ず」というように、「念仏と調和する荘厳」が重要である。
【参考】『浄土宗荘厳全書』(四季社、一九九六)
【参照項目】➡荘厳具
【執筆者:福西賢雄】