口伝
提供: 新纂浄土宗大辞典
くでん/口伝
教えを直接話して伝えること。口授、口訣とも言う。また直授、面授とも言い、双方が対面して直接伝える方法である。『往生論註』の中、十念相続に「若し必ず知ることを須いば、亦方便有り。必ず口授を須て。之を筆点に題することを得ざれ」(浄全一・二三七上)とある如く、口伝えによる直接的な伝授の方法を勧めているが、これは文字による間接的な伝授によって生ずる意味の取り違えを避けるためである。また法然の『つねに仰せられける御詞』には「口伝無くして浄土の法門を見るは、往生の得分を見失うなり」(聖典六・二七八/昭法全四九二)とあり、文章のみでは伝えられない教義を口伝えによって補うことで正しい意味として捉えることができるとしている。つまり口伝は教義を間違いなく相伝する方法として最適であり、そのことから教義の重要な部分を伝える際に多く用いられている。浄土宗においても伝法には口伝が多く、特に五重相伝では知残伝、云残伝、書残伝など合計五五箇条に及ぶ口伝がある。
【執筆者:兼岩和広】