枕経
提供: 新纂浄土宗大辞典
まくらぎょう/枕経
死亡の知らせを受けたときに、菩提寺よりすぐに僧が赴き、死者の枕元で経を読むことをいう。江戸時代、納棺前に臨終の相を検査する役割を檀那寺が持っていたため、検葬ともいった。『法要集』によれば阿弥陀仏の来迎を念じ、三帰を授けて髪を剃り仏弟子とし、念仏者の証として戒名を授けて念仏回向する。新亡を安置する際には、釈尊入滅の姿である「頭北面西」にするが、実際には来迎仏(名号)または仏壇を西方と見たてて(以信転方)北枕にする。新亡の枕辺の壇上には、位牌の前に水、香、灯燭、一本樒または一本花、霊膳、供物等を供える。また来迎仏または名号を奉安するとあるのは、遺体を安置する場所が仏壇と離れている、あるいは仏壇がない場合である。法要はまず仏壇または来迎仏の前において修し、次に転じて新亡の所に行き、剃度作法と授与三帰三竟を行う。剃度作法は、まず報恩偈を唱え、焼香し、剃刀を取って香に薫じ、小三鈷の印で加持する。次に剃髪偈を一唱しながら頭の頂上より額に向けてすべらせて止める。次にまた一唱しながら左横を頂上より首すじに到り、次にまた一唱しながら右横を同じく頂上より首すじに到り、最後に剃刀を頭中央に当てたまま十念を称えて剃刀を置く。続いて、仏弟子となるため仏法僧に帰依を表する三帰三竟を行う。「我弟子等 願従今身 尽未来際 帰依仏両足尊 帰依法離欲尊 帰依僧衆中尊」(三唱)。「我弟子等 願従今身 尽未来際 帰依仏竟 帰依法竟 帰依僧竟」(三唱)。次に授与戒名を行う。「ここに新華台あり 俗名○〇〇 今解脱号を授与して○〇〇と号す 必得往生」などといって十念する。ここで仏前に戻り、誦経する。この後、納棺に移る。
【参考】板倉貫瑞『蓮門小子の枝折』(浄土宗宗務庁、一九七一)、宍戸寿栄『浄土宗法儀解説』(真教寺、一九六六)、宍戸栄雄『一遇 葬儀式二』(一隅会、一九七七)、『法要集』
【執筆者:岡本圭示】