来迎仏
提供: 新纂浄土宗大辞典
らいこうぶつ/来迎仏
命終の迫った念仏者を浄土へ導くために、自ら迎えに来る阿弥陀仏のこと。一般的には、その様子を模した像や図画を指し、臨終行儀の本尊仏として用いることがある。道宣『四分律刪繁補闕行事鈔』下には、祇桓無常院に五色の幡を手につなげた金薄塗りの立像が置かれ、病者にはその幡脚をとらせ「仏に従いて浄刹に往く意を作さしむべし」(正蔵四〇・一四四上)とある。この文は源信『往生要集』巻中大文第六「臨終行儀」に引用され(浄全一五・一一二下)、良忠『往生要集義記』六では像は三尺の阿弥陀仏立像と説く(浄全一五・三一二上)。金戒光明寺、禅林寺の山越阿弥陀図の指の部分には、臨終行儀の折に五色の糸をつけたと考えられる痕跡が残っている。
【参考】中野玄三『来迎図の美術』(同朋舎出版、一九八五)、加須屋誠『仏教説話画の構造と機能』(中央公論美術出版、二〇〇三)
【執筆者:田中夕子】