仏壇
提供: 新纂浄土宗大辞典
ぶつだん/仏壇
広くは仏像を安置する壇を指すが、一般的には仏や宗祖、先祖霊を祀り家庭内の祭祀を営む施設。神棚と同じように、奥座敷など客間として使用される非日常的な空間に設けられる常設のものや、居間や台所など家人が相互に起居し、団欒する日常的な空間に設置する箱型のものがある。形態や祀る場所は宗派や地域によって異なる。インドでは僧院に仏像を祀る場合があり、中国では家々に先祖を祀る祠堂を造り、先祖の霊を祀る場をもった。日本では『日本書紀』が伝える天武天皇の白鳳一四年(六八五)の詔「諸国家毎に仏舎を設け、仏像及び経典を安置し、礼拝供養すべし」が初見であるが、一般の家々に仏壇が祀られたのは江戸期になってからのことである。仏壇は一般的に厨子型の祠殿が多く、浄土宗では中央に本尊阿弥陀仏、向かって右に観音、左に勢至の両菩薩を脇侍として祀り、さらに両菩薩の右に善導、左に法然の両大師を、そして一段下に極楽に往生した先祖の位牌を祀る。仏壇は寺院の本堂内陣を小型化させたもので、ともに極楽を象徴する。近年は住宅の変容に伴い、仏壇にも家具調のものが考案されて、この規範が守られていない場合もある。檀信徒は毎朝晩に本尊を礼拝して浄土の信仰を深め、極楽に生まれた先祖の修行が一層進みますようにと日常勤行式を読み祈る。日常勤行式の最後の「送仏偈」にあるように、日々の供養は極楽に往生した者と現実に生きる遺族の共同作業である。真宗各派では先祖の霊は極楽に生まれているので、この世に残すべきではないとして基本的に位牌は祀らない。仏壇と神棚は、清浄で、神聖な場所にあることが大切で、同じ部屋に並列して祀ることが望ましい。
【参考】大河直躬『住まいの人類学—日本庶民住居再考—』(平凡社、一九八六)、平山敏治郎「神棚と仏壇」(『史林』三二—二、一九四九)、三浦秀宥「仏壇と位牌」(『講座日本の民俗宗教』二、弘文堂、一九七九)
【執筆者:藤井正雄】