授戒会
提供: 新纂浄土宗大辞典
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じゅかいえ/授戒会
仏門に入る際、あるいは入った後に、出家者が出家者・在家者に戒を授ける法会のこと。なお古代インドでは各種の戒の授戒に様々な規定があった。たとえば五戒であれば、具足戒を受けた出家修行者ならば、いつでも在家仏教信者に五戒を授けることができ、また在家者は希望すれば誰でもが五戒を受戒することができた。十戒の場合は、具足戒を受け五年を経過した出家修行者であれば、自ら師となって沙弥・沙弥尼を弟子とする際に、まず所属の僧団において許可を受け、その上で個人的に十戒を授けることができる。弟子を持つには具足戒を受け一〇年を経過した出家修行者でなければならないという説もある。具足戒の場合は、在家者が最初から具足戒を受戒することはできず、まず五戒を受け優婆塞・優婆夷となり、次に十戒を受けた上で具足戒を受戒できることとなる。
[授戒の作法]
たとえば十誦律では、十人僧伽(三師七証)が必要となる。また授戒の作法に際しては、①十人僧伽②受戒者の具足戒を受けたいという意志表明③白四羯磨の正しい実施が不可欠である。まず受戒者は十人僧伽一人一人に接足作礼を行い、続いて羯磨師が三衣一鉢を教える。次に和尚(直接の師)になるべき人に対して、和尚を求める。次に受戒者を退座させて教授師役を選出する。選出された教授師が別所に控える受戒者の所に行き問遮を実施し、その結果を報告する。問遮で問題がなければ教授師が受戒者を連れ戻し、僧伽に礼拝することを指示する。次に受戒者は具足戒の受戒を僧伽に対して請い願う。その上で白四羯磨の正しい実施が行われる。その後に、羯磨師から四依(衣・食・住・薬)に関する説明を受ける。なお和尚がいなければ具足戒を受けることができず、また羯磨師は特に有能な人物を選出していた。
[浄土宗での授戒会]
浄土宗の戒は聖冏の『顕浄土伝戒論』にもとづき、『黒谷古本戒儀』もしくは『黒谷新本戒儀』所説の十二門戒儀に則った円頓戒の相伝をもって能化の授戒としており、伝宗伝戒道場の「正授戒」で授けられる。また円頓戒そのものが鎌倉時代初期から在家を対象とした相伝が行われてきたこともあり、中世から近世にかけて在家者への円頓戒授戒が実施され、浄土宗ではおそらく江戸時代中期頃から積極的に在家者を対象とした授戒会が実施されたものと考えられる。檀信徒のための授戒会は、結縁授戒ともいう。なお在家者を対象とした一日授戒もあり、これは一日で十二門戒儀の解説と正授戒を実施する内容となっている。また『法要集』では正授戒の順序次第について、法鼓、調読、受者入堂(香水、香湯、塗香、触香、灌頂)、道場洒水、道場散華、喚鐘、露地偈、伝戒師入堂、右繞三匝、伝戒師・脇師入堂、香偈、三宝礼、四奉請(散華)、歎仏偈、表白、伝戒師転座(登高座、両脇師随従)、発起焼香、受者三拝、授与十念、受者一拝、請師、戒序披読、正授戒、日課誓約、授与戒牒、摂益文、念仏一会、伝戒師転座、総回向、偈十念、総願偈、三唱礼、送仏偈、十念、授与十念、伝戒師・脇師退堂、受者退堂と記している。
【執筆者:柴田泰山】