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三衣一鉢

提供: 新纂浄土宗大辞典

さんねいっぱつ/三衣一鉢

出家者が最低限所有を許されたもので、下衣(安陀会あんだえ)・上衣(鬱多羅僧うったらそう)・大衣僧伽梨そうぎゃり)の三衣と一鉢のこと。衣について、ジャイナ教やアージービカ教では、無所有の精神を徹底させ裸体を称讃するが、仏教では虻蚊、寒暑などを防ぎ、恥部を覆うべきであるとし、裸体をきらった。鉢については出家乞食托鉢により食を入手するのが前提であるゆえ、その所有が許された。ただし一つだけとするのは節量のため。最低限のものだけによる生活を説く教説に四依・四聖種がある。これらでは三衣一鉢以外に薬と臥具が含まれる。ただ薬は病気という非常時だけに服用するゆえ、食の部類に含めるという解釈アビダルマの時代にみられる。臥具は雨季、もしくは就寝時に必要なものとしてのちに許された。浄土教では『善導大師別伝纂註』下に、「嗚呼三衣一鉢以て自供するに足れり。飢えず、こごえずんば、その余は何をか求めん」(浄全一六・七七下)とある。師から弟子に奥義を伝えることを「衣鉢を継ぐ」というのは、これに由来する。


【参照項目】➡袈裟衣鉢六物


【執筆者:西村実則】