十戒
提供: 新纂浄土宗大辞典
じっかい/十戒
一〇種の戒のこと。種々の十戒がある。1沙弥・沙弥尼の受持する十戒で、次の一〇項目からなる。①不殺生(殺さない)、②不盗(与えられていないものを自分のものとしない)、③不婬(性交渉を持たない)、④不妄語(うそをつかない)、⑤不飲酒(酒を飲まない)、⑥不著香華鬘不香塗身(化粧したり装身具をつけたりしない)、⑦不歌舞倡妓不往観聴(歌舞音曲を見物しない)、⑧不坐高広大床(広く高くて立派なベッドを使わない)、⑨不非時食(正午以降に食事をしない)、⑩不捉持生像金銀宝物(金銀財産を蓄えない)(以上の訳語は『沙弥十戒法幷威儀』正蔵二四・九二六中)。「五八十具」と並べるときの「十」はこれ。良忠は『伝通記』序分義記(浄全二・二八〇下)に十戒の成り立ちについて、八斎戒の「塗飾香鬘歌舞観聴」を開いて⑥と⑦の二種とし、それに⑩「不受畜金銀等宝」を加えて十戒とするという『俱舎論』の説を紹介する。2十善戒を指す。『玉耶女経』では、①不殺生、②不偸盗、③不婬佚、④不妄語、⑤不飲酒、⑥不悪口、⑦不綺語、⑧不嫉妬、⑨不瞋恚、⑩信善得善の一〇項目を挙げて「十戒」と呼び、優婆夷の所行であるとする(正蔵二・八六五下)。3梵網戒の十重禁戒を十戒という。①不快意殺生命戒、②不劫盗人物戒、③不無慈行欲戒、④不故心妄語戒、⑤不酤酒罪縁戒、⑥不説他罪過戒、⑦不自讃毀他戒、⑧不慳生毀辱戒、⑨不瞋不受謝戒、⑩不誹謗三宝戒の一〇項目(『釈浄土二蔵義』浄全一二・一七五上)。良忠は小乗戒としての沙弥の十戒に対して、大乗戒として梵網戒の十戒を挙げる(『観経疏略鈔』浄全二・五八七上)。この他に『華厳経』『大日経』『涅槃経』『大智度論』にも十戒を説く。
【執筆者:齊藤舜健】