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浄土宗制

提供: 新纂浄土宗大辞典

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じょうどしゅうせい/浄土宗制

浄土宗の制約規定のこと。浄土宗に所属する者は遵守する義務がある。浄土宗の憲法ともいえるもので、宗憲、宗法、宗綱宗規ともいう。

明治五年(一八七二)六月九日、仏教各宗に教導職管長一人が置かれ、同年一〇月三日には一宗一管長制が教部省達示によって定められた。一〇月一九日、伝通院養鸕うがい徹定が管長となったのが本宗管長の初めである。同六年五月、浄土宗務局は浄土宗部署規則一三条を布達、同一一年三月、三河以西を西部、遠江とおとうみ以東を東部として、内務省達で西部管長、東部管長が任命され、同一七年八月、東部西部に各宗務取扱所が置かれたが、同一八年三月、東西両部名を廃止し一管長制を内務大臣に申請して認可された。同一九年八月、宗務所は宗会議規則と本宗制規一〇章四八条を布達し、一〇月第一次闔宗会こうしゅうかいを開き宗制案を審議、一一月八日に宗制寺法本則を審議決定した。同二〇年五月一七日には浄土宗宗制七章四八条ならびに附則などにつき内務大臣の認可を得て翌日発布。同二二年一二月二三日に宗制改定、同二五日管長が宗制一八章一二一条の実施を達示した。制定発布された浄土宗の教旨および教式は、「第一章教旨、第一条教旨の要領は釈迦牟尼仏の教に依り、阿弥陀仏本願を信じ名号を称え浄土の妙果を期するに在り。第二条正依の経典は無量寿経康僧鎧訳)観無量寿経畺良耶舎きょうりょうやしゃ訳)阿弥陀経鳩摩羅什訳)の三経なり。第三条経典及宗義解釈善導大師の御疏、円光大師選択本願念仏集、正宗国師の授手印記主禅師選択伝弘決疑鈔の指南に従う。第四条伝灯は印度支那の列国及日本宗祖円光大師、正宗国師、記主禅師の統を承け、以下各自所伝の譜脈に依る。第二章教式、第五条本宗は阿弥陀仏本尊とし、観世音菩薩、大勢至菩薩の二脇士及教主釈迦牟尼仏、宗祖善導大師、円光大師を奉祀す。第六条本尊仏及二脇士本堂正面に安置するものとす、仏壇仏間に於けるも亦同じ。第七条本宗の行法は念仏を以て正業とし、礼誦を以て助業とす、正助二業の外余行を雑修せず。第八条祝聖及仏祖報恩の法要は宗内一般之を修す、其他仏門の通規にして宗祖の洪範あるもの及宗義を妨げざる法要は尚お之を修することを得。第九条本宗帰入の式は三帰日課念仏を誓約するものとす。第十条得度伝宗伝戒及法要法式宗規の定むる所に依るべし」とある。浄土宗制の基本はこれに始まり、その後変遷はあったが教旨および教式は厳として今日に至る。

浄土宗宗綱は昭和三七年(一九六二)四月七日に発布され、一一章三八条から成る。すなわち、第一章総則(名称、教旨及び目的、組織及び運営、伝統、本尊、経論、教化、教学、宗歌宗紋)、第二章総本山及び大本山総本山大本山)、第三章浄土門主及び法主浄土門主、門主の職務、宗務責任、門主の任期と推戴、法主法主の任務、法主の任期及び推戴)、第四章寺院及び住職寺院又は教会、住職又は主任)、第五章僧侶法類及び寺族僧侶法類寺族)、第六章檀徒及び信徒(檀徒、信徒、総代)、第七章宗務機関(宗務庁及び宗務総長教区及び教区長、議決機関及び諮問機関、勧学寮)、第八章監正機関(監正審議会及び会計監査会、褒賞及び懲戒)、第九章教化及び教学(教化及び教学)、第一〇章財務(財務、管理)、第一一章補則となっている。なお、この宗綱は条文等に若干の修正があり、現行宗綱は平成二〇年(二〇〇八)一〇月一日に達示されたものである。その中、教旨および教式については「第二条、本宗の教旨は、阿弥陀仏帰命し、その本願を信じ、称名念仏によって、その浄土への往生を期するにある。本宗の目的は、宗祖法然上人立教開宗の精神に則り、本宗の教旨をひろめ、儀式を行い、僧侶檀信徒、その他の者を教化育成し、本宗を護持発展させることにより、社会平和と人類の福祉に寄与するにある。第三条、本宗は、本宗の教旨を信奉する個人、寺院、教会その他の団体をもって組織し、運営する。第四条、本宗の伝統は、教主釈迦牟尼仏、高祖善導大師及び宗祖法然上人以下列祖の法脈を受け、伝宗伝戒によりこれを相承する。第五条、本宗の本尊は、阿弥陀仏とする。第六条、本宗所依の経論は、仏説無量寿経(曹魏天竺三蔵康僧鎧訳)、仏説観無量寿経(宋元嘉中畺良耶舎訳)、仏説阿弥陀経(姚秦三蔵法師鳩摩羅什奉詔訳)の三経並びに天親菩薩無量寿経優婆提舎願生偈往生論)の一論とする。前項の経論並びに宗義解釈は、善導大師の観無量寿経疏法然上人選択本願念仏集聖光上人末代念仏授手印および良忠上人選択伝弘決疑鈔による。第九条、本宗の宗歌は、法然上人御作の和歌『月かげのいたらぬさとはなけれどもながむる人の心にぞすむ』とする。第十条、本宗の紋章宗紋という。宗紋は、月影杏葉つきかげぎょようとする」(以下略)。

宗制を分類すると、本宗の統理、体制、財産になり、これを規定化している。門主管長)を統理とし、体制は宗政、教化、教育、経済に分けられるが、宗政は立法(中央宗議会、地方教区会)、行政(中央宗務庁、地方教務所、公布機関誌宗報)、監正(会計監査会、監正審議会)の三権分立制となっている。教化、教育、経済については本宗の興隆発展のため適切な規程によって運用され、さらに制度審議会を設けて、本宗制規の適正化をはかり研究または審議し、宗務総長の諮問に答申し、または意見を具申し、制規の改正補足の研究、制規の施行上必要な細則の審議設定を行い、宗務総長は必要により責任役員会の議を経て、その実施処置を決定する。


【参照項目】➡浄土宗宗綱


【執筆者:宇高良哲】