「放生会」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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ほうじょうえ/放生会
捕えられている魚・鳥等の生き物を河川・池・海・山野に放つ法要。『梵網経』第二十軽戒の所説に準じて、生命を尊重し、慈悲を実践する目的で行う。『金光明経』等にも説かれ、『列子』説符にも「正旦に生を放ちて、恩有るを示す」とあるように、中国・日本でも古くから行われていた。浄土宗は敬首『放生慈済羯磨儀軌』の式次第によって、放生する生類に三帰・仏名等を授与して法器とする儀礼を行う(『浄土苾蒭宝庫』上・二九ウ)。『梵網経』には、「慈心を以ての故に放生の業を行ぜよ。一切の男子はこれわが父、一切の女人はこれわが母、我生々に、これに従って生を受けざることなし。故に六道の衆生は皆これわが父母なり。而して殺して食するは、即ちわが父母を殺し、またわが身をも殺すなり」(正蔵二四・一〇〇六中)とある。勝荘『梵網経菩薩戒本述記』三は、四十八軽戒中の不行放救戒を放生戒と称している(続蔵三八・四二四下)。この戒は、殺生と肉食という視点から放生を勧め、また追善供養を行うように規定している。『放生慈済羯磨儀軌』は、烏枢沙摩明王解穢の真言と洒水作法によってその心を洗い、慈心不殺の心によって生類を法器として、三帰戒と十二光仏・菩薩戒経の教えを授け、如来の慈光を蒙り、速やかに苦界を出離して菩提を成ずることを願い、さらには参詣者の業障消滅・滅罪生善を願う法会でもある。外陣の烏枢沙摩明王の傍らに放生する生類を安置し、導師・出僧一から五が仏前または生類に向かって講説する。知恩院御忌等の大会の最終法要として放生会を厳修し、放生池に魚類を放っている。水産業者等が施主となって、鰻・鶏などを供養するために放生会を行うことがある。また葬儀等に放鳥と称して鳩などを放つことも同様の趣旨がある。
【資料】『諸回向宝鑑』四、『啓蒙随録』二
【参照項目】➡烏枢沙摩明王、烏枢沙摩明王解穢神呪、不行放救戒、放生慈済羯磨儀軌
【執筆者:西城宗隆】