六道
提供: 新纂浄土宗大辞典
ろくどう/六道
すべての衆生が生前の業の報いによって赴く六種の輪廻の世界のこと。Ⓢṣaḍ-gatiの訳。六趣ともいう。①地獄道(生前に犯した悪しき罪業によって堕ちる、地下にある筆舌に尽くせない苦しみを受ける世界)、②餓鬼道(生前の物惜しみなどの罪業で堕ちる、飢渇に苦しむ世界)、③畜生道(生前の罪業により堕ちる、自己保存のために互いを餌食とし合う苦しみ多い動物の世界)、④阿修羅道(修羅道ともいう。生前に戦闘を好み、慢心・猜疑心の強かった者が堕ちる、常に闘争を繰り返す世界)、⑤人道(人間の世界)、⑥天道(天人の世界)の六つ。古代インドでは当初、人は死後、天の王国に至り、無常の幸福を享楽すると考えられていたが、やがて悪行者が赴く場所として地獄が現れ、輪廻・業思想の発達と共に、人間や動物も生まれ変わる対象となった。これが仏教に取り入れられ、飢渇に苦しむ祖霊としての餓鬼を加えた五道(五趣、阿修羅を除く)として成立した(『雑阿含経』一六、正蔵二・一一二中)。また、かつては神の一部であった阿修羅を加えて六道とする説も生まれた。この中、地獄・餓鬼・畜生を三悪道、阿修羅・人・天を三善道ともいう(『大智度論』三〇、正蔵二五・二八〇上)。五道・六道の相違、および餓鬼・畜生の順序の前後に関しては諸経論で異同がある。日本仏教では六道説が一般的で、信仰対象としての六観音・六地蔵、死者儀礼としての六道銭などはこれに由来する。
【参考】壬生台舜「六道説に関する二、三の問題について」(坂本要編『地獄の世界』渓水社、一九九〇)
【執筆者:榎本正明】