六観音
提供: 新纂浄土宗大辞典
ろくかんのん/六観音
六道の衆生を救うために配された六種の観世音菩薩。天台では聖観音・千手観音・馬頭観音・十一面観音・不空羂索観音・如意輪観音を指し、真言では不空羂索に代えて准胝観音をもって六観音とする。『請観音経』六字章句陀羅尼による観音の諸道抜苦の功徳を、智顗が『摩訶止観』二上で大悲・大慈・師子無畏・大光普照・天人丈夫・大梵深遠の六観音として具象化した。小野仁海が『摩訶止観』の六観音に上述の真言六観音を充て、これに対し天台では准胝を斥けて不空羂索を入れた。日本では一〇世紀より六道輪廻思想の広まりに伴って貴族社会に六観音信仰が広まり、万寿元年(一〇二四)藤原道長による法成寺薬師堂六観音造像供養はその代表例である。摂関期には来世を志向する六道抜苦思想として隆盛したが、院政期になると現世利益的な観音信仰の一形態へと回帰していった。
【参考】速水侑「平安時代における観音信仰の変質—六観音信仰の成立と展開」(『観音信仰事典』戎光祥出版、二〇〇〇)
【参照項目】➡観音信仰
【執筆者:春近敬】