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馬頭観音

提供: 新纂浄土宗大辞典

ばとうかんのん/馬頭観音

頭部が馬の頭、または頭頂に馬の頭を載せた観音菩薩のこと。観音菩薩がさまざまに変化へんげした姿の一つであり、六観音の一つとされる。ⓈHayagrīvaの訳。もとはヒンドゥー教の神であるヴィシュヌの化身の一つであったが、仏教に取り入れられ菩薩となった。忿怒ふんぬの相をあらわし、人間の身体を持ち、馬頭を直接頭にするものや、頭の上に馬の頭の飾りを載せた姿をしている。諸々の悪や苦悩を断ち切り、馬が草をむさぼり食うように、煩悩を食べ尽くし、衆生救済するという。像容には様々なものがあり、一面二や、三面二臂、三面八臂、四面八臂などがある。三面八臂で三目(額に縦に一目を持つ)の像も多く見られる。一般に観音菩薩は穏やかな表情であらわされるのに対して、馬頭観音の表情は目をつり上げ、怒髪天を衝き、牙をむき出しにした忿怒相をしているために、馬頭明王、大力持明王などとも呼ばれ、八大明王の一つにも数えられる。『陀羅尼集経』(正蔵一八・七八五上)などの経典にあらわれる。その姿から、畜生道を教化する菩薩とされ、馬や牛の保護、病気平癒や安全祈願のために馬頭観音像が造られ、信仰されるようになった。京都・浄瑠璃寺や福井・中山寺のもの(いずれも国重要文化財)が有名である。


【参照項目】➡六観音


【執筆者:吉澤秀知】