「導師」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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どうし/導師
一
衆生を教化し、仏道に導く偉大な指導者。仏・菩薩を指す。原語には、指導者・先導者・案内者などを意味するⓈnāyakaが挙げられる。しかし、ⓈnetṛⓈijayaⓈjinaⓈdeśikaⓈloka-nātaⓈśāstṛなど多くの原語が存在し、仏典に頻出する。『瑜伽論』菩薩地四七には、『十地経』第二地に基づき住歓喜地の後に習学に励み、その後に「大菩提を証し、大導師となり、一切有情の商侶を率領し、生死の曠野嶮道を超度す」(正蔵三〇・五五五下)とある。また法護訳『大乗集菩薩学論』七では『華厳経』入法界品に基づき、「群盲の導師となり、其の安穏処を示し、智剣をもて冤賊を伏し、解脱三法忍をもて、世間の導師となる」(正蔵三二・九五下)とある。これは仏の性質の中から、特に救済・教化、すなわち慈悲の面を強調した呼称。また「菩薩」が導師とされる用例として『法華経』五従地涌出品では、大地から出現した四人の上首菩薩摩訶薩を四導師(上行菩薩、無辺行菩薩、浄行菩薩、安立菩薩)と呼んでいる。
【執筆者:中御門敬教】
二
法会のときに首座となって儀式を行う役職名。法要の趣旨を最も明確に顕した作法である表白・諷誦文などの捧読と回向を修し、法要の出仕者を統括して儀式の主導を行う僧をいう。日常勤行式での導師は正宗分の句頭を発声する。ただし、大会のときは維那・句頭が発声することがある。勤修形態と時系列によって、開白導師・結願導師と、日中導師・逮夜導師などともいう。また法会によって導師は呼称が異なり、結婚式では戒師、得度式・剃度式では和上、正伝法では伝灯師、正授戒では伝戒師などと称する。総・大本山の御忌会などでは、法臘を積んで充分に責任を果たしうる人徳を有する僧が門跡・法主に代わって一座の法要を勤め、唱導・諷誦などを朗誦するので唱導師・初讃導師という。大遠忌などの大会では中導師・左導師・右導師の三導師が厳修し、左導師が表白、右導師が宣疏、中導師が御回願と授与十念を修している(「大殿逮夜法要」『三上人遠忌法要差定』知恩院、一九八六)。昭和四七年(一九七二)八月の増上寺大殿上棟式では、大導師と五導師(洒浄導師、法楽供導師二名、結界導師二名)によって厳修した(『三縁』一七二、一九七二)。葬儀式では下炬を導師、鎖龕・起龕・奠湯・奠茶・霊供・念誦などの役を脇導師が勤める。また三導師(導師・脇導師二名)を三仏、五導師を五仏などと俗称している。
【執筆者:西城宗隆】