唱導
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうどう/唱導
仏教経典や論著に基づき、演説によって民衆を教導すること。淵源は釈尊在世時の説教に求められ、中国・朝鮮半島を経て、日本でも独自の展開を見せた。日本では、聖徳太子の『勝鬘経』講経が文献上の初出とされる。その実態を窺うことができるものとしては、平安初期の『東大寺諷誦文稿』があり、表白・願文などの例句を分類して収載する。天仁三年(一一一〇)の『法華修法百座聞書抄』は、三〇〇日に及んだ法華講会の一部の記録であるが、演者の語り口をも彷彿とさせる。『打聞集』は、院政期の説教の聞き書きで、多様な説話が唱導の場で語られていたことを示している。平安末から鎌倉期にかけては、安居院流の唱導家が活躍した。また各宗派によって教線拡張のため、民衆を対象とした唱導が盛んに行われた。近世においては、一層大衆化して芸能とも結びつき、安楽庵策伝・浅井了意・鈴木正三・粟津義圭らの傑出した唱導家が輩出した。
【参考】永井義憲『日本仏教文学研究』一(豊島書房、一九六六)、『同』三(新典社、一九八五)、関山和夫『説教の歴史的研究』(法蔵館、一九七三)、山崎誠『中世学問史の基底と展開』(和泉書院、一九九三)
【執筆者:吉原浩人】