鎖龕
提供: 新纂浄土宗大辞典
さがん/鎖龕
葬儀式の脇導師の作法。正式な表葬式では、導師の左右に、六人の脇導師を従え行う。これを俗に「七仏」ともいう。鎖龕・起龕、奠湯・奠茶・霊供・念誦の役の脇導師である。鎖は「とざす・とじる」と訓じて、龕(棺)を閉ざす意味。『大般涅槃経後分』下「機感荼毘品」に、釈尊の入涅槃に際し、「大衆は悲嘆暗咽し、深重敬心に各々微妙の白氈を以て手を障え、如来を扶けて金棺の中に入れ、香油を注満し畢って、棺門をいま閉ず」(正蔵一二・九〇七上)とあり、棺を閉ざす故事による。脇導師が棺前に進んで、閉ざす意味を持つ句を唱える作法をいう。鎖龕の作法は①自席より中啓を持って導師の前まで進み導師に問訊(低頭)する(導師の正面を避ける)。②祭壇の正面に進み、中啓を香炉の右に置き焼香・合掌意念する。③左手を金剛拳に結んで左腰にあて、中啓を香炉に薫じ、自席方向へ右斜め後方に三歩(右・左・右)下がる。④左手に金剛印を結び左腰にあて、中啓で一円相を画く。⑤中啓を胸前斜めに持ち、鎖龕の一句を唱える。一例として「華は開く希有の色 波は揚ぐ実相の音 作麼生か 鎖龕の一句 閉塞諸悪道 通達善趣門」。唱え終わり、中啓を襟に挿し、十念(やや低唱)する。⑥中啓を持ち、祭壇の正面に進み、中啓を机上に置き、合掌意念する。⑦中啓を持ち、導師の前まで下がり、問訊して自席に戻る。
【参照項目】➡起龕
【執筆者:渡辺俊雄】