一円相
提供: 新纂浄土宗大辞典
いちえんそう/一円相
炬火などで虚空に描く円。円相ともいう。一つの円相を画いて真如、法性等を表すことをいう。禅宗では他者に対して禅の第一義を示すときに用いられる。『人天眼目』(正蔵四八・三二一下)によると南陽の慧忠(—七七五)から始まり、弟子の耽源真応・仰山慧寂(八〇四—八九〇、八〇七—八八三とも)と伝授したもので円相六義とされ、九七種の円相があるとされる。また天台宗の妙叶の『宝王三昧念仏直指』(正蔵四七・三七九中)では一円相が十方無辺虚空を譬えるものとしている。一円相が、葬儀において下炬(秉炬)と共に用いられる例は『仏照禅師語録』(正蔵八〇・三七下)の円大師秉炬に見受けられ、また天倫楓隠の『諸回向清規』(一五六六)に記載する百丈懐海(七四九—八一四)の下火(引導)には「一円相を打ちて云々」とあり古くから葬儀に用いられていた。浄土宗では洒水や葬儀などのときに用いられ、その意念するところは異なる。『浄土宗法要儀式大観』には下炬の項で「一円相を描き欣求浄土の意念を凝らす。一円相は仏土の形で亡霊をして浄土を欣ばしめ、亦是を引導するの意味である」(一五五頁)とある。
【参照項目】➡下炬
【執筆者:大澤亮我】