世間
提供: 新纂浄土宗大辞典
せけん/世間
仏教では欲界・色界・無色界の三つの領域(三界Ⓢtri-dhātu)を世間とする。さらに衆生が生きる器としての環境世界、すなわち山川草木国土などを「器世間」と呼び、その中に存在する心や感情をもつ有情(衆生)の集合体を「有情(衆生)世間」と呼ぶ。ⓈⓅloka。世界、世、世俗、世人とも訳され、また路迦と音写される。語源学的には語根「見る、認める」(√lok)より派生した語で、本来は視覚的に広がる領域を意味していたと考えられ、天界・地界の二世界、天界・空界・地界の三世界などの領域としての世界を意味する一方で、その領域の中にある社会などの集合体も意味する。仏教においては、もっぱら思想的重点が有情世間に置かれ、単に「世間」という場合には、「有情世間」を意味し、日本語で世の人々を集合的に「世間」と呼ぶのに等しい。『俱舎論』一は「世間」を煩悩のあるもの(有漏法)の同義語とし、「破られるもの」と見る。称友の註釈は、世間(loka)を語根(√luj=√ruj)から派生した「破られるもの」と見る通俗語源解釈を挙げ、さとりの智慧をもって煩悩の迷いが破られるもの、「対治」するものとし、世間を煩悩に覆われて苦に導かれているものたちの集合体である「世俗」とする。
【執筆者:吹田隆道】