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要偈道場

提供: 新纂浄土宗大辞典

ようげどうじょう/要偈道場

浄土宗における五重相伝正伝法しょうでんぼうは、前伝と後伝に分かれており、その前伝のこと。この道場は、浄土宗義の肝要な偈文である要偈四句しくの偈)の説示内容を伝授するものである。本堂内東方に釈尊霊山浄土をかたどり、釈尊の御前で直接に念仏の教えを授与されると受け取るのである。また西方阿弥陀仏極楽浄土をかたどり、その中間に白道を敷く。これは、釈尊は東方から、この道を往けと発遣し、弥陀西方から来り迎えんと宣べる様を表している。

[目的]

儀礼を通して浄土宗の奥義を授けることを目的とする。まず三帰戒を授け、「浄土三部経」の要偈口授する。二河白道念仏者の日常生活を具体的に表現したものである。

荘厳

本尊の尊体と蓮台の間から、白木綿を垂らし、香炉でおさえる。須弥壇前机の上を覆い、外陣にしつらえた釈迦三尊まで敷きつめる。須弥壇五具足または三具足とし、朱蠟燭を立てる。前机五具足とし朱蠟燭を立てる。三方に紅白餅一重と菓子を盛る。本尊前座には経机焼香炉、導師華籠洒水器華籠拝敷を用意する。釈尊前は三尊画像、屛風一対、経机香炉香盒こうごうを置く。前机三具足または五具足、餅一重、生菓子一対または水菓子一対を供える。維那座は大きん小鏧経机はち割笏かいしゃくを置く。高座背後に要偈二祖対面図、二河白道図を安置し、高座上に灯燭一対、洒水器水瓶すいびょうを用意し、説相箱の中に表白、『制誡』『安心請決』『授手印』を入れ、槌砧ついちん柄香炉香盒および三方血脈けちみゃくのうを置く。また高座脇に経机を二脚および拝敷を置く。高座前に経机を置き受者代表用の香炉香盒、および鉦を置く。掛軸は、二河白道図二祖対面図、要偈を用意する。本堂入口に、塗香器、象香炉、香水香湯器、浄水器を置く。表白類は、要偈表白、『制誡』『安心請決』『授手印』、誓約を調える。露地偈、香水香湯偈は普段使用することが少ないので紙に書いて壁に貼る。四天王像または四天王幡を四隅に用意する。

作法と進行]

香水・香湯偈—香水は浄水香湯は丁字を煎じたものを用いる。塗香ずこう触香そっこうの後、灌頂洒水を行う。

受者入堂—白道を踏まないように入堂し、本尊前に向かって着座する。

道場洒水道場散華道場洒水で浄めて結界し、散華荘厳する。露地偈は後堂で全員が唱える。

伝灯師三匝さんぞう伝灯師は無言で三匝する。

伝灯師脇師囲繞いにょうして入堂する。伝灯師侍者釈尊前へ進み、払子ほっすを振って着座し焼香三礼する。受者は釈尊前に向かって、導師の三拝に合わせて三礼する。伝灯師敬礼偈を発声し十念を称える。一礼し受者は座礼する。つぎに伝灯師は白道を歩んで本尊前に進む。本尊前につき、払子を振り着座する。このとき、展坐具をする。

香偈三宝礼のあと四奉請散華は、導師脇師が揃って行う。伽陀を誦すときに伝灯師は両脇師を伴い転座して登高座し、焼香のあと洒水作法を行う。脇師は着座する。

右方制誡教授師は「右方制誡」と発声する。伝灯師は『制誡』を香に薫じ、侍者を通して右脇師に手渡す。脇師長跪または起立して『白旗式状』を捧読する。読み方には独特の口伝がある。

左方安心請決—教授師は「左方安心請決」と発声する。伝灯師は、『安心請決』を香炉に薫じ、『制誡』のときと同様に侍者を通して左脇師に手渡す。左脇師作法は右脇師と同様である。

受者金打きんちょう三下教授師は『制誡』並びに『安心請決』の趣を守ることを誓い、金打三下するよう受者に言う。受者代表は金打三下する。伝灯師から指示するよりも教授師を通して指示する方が、より儀式的という意見がある。

法道儀軌捧読—伝灯師は『伝法道儀軌』の項目を槌砧または割笏を打って発声する。

第一 訓導

第二 懺悔三帰

第三 披読授手印の序

第四 道場表顕

第五 伝法由来

第六 伝法要偈四句細釈

第七 伝法作法

第八 授与日課

第九 念仏回向

項目の立て方は、伝書により異なる。『吉水瀉瓶訣しゃびょうけつ』『浄業信法訣』は九箇条を指示している。この内、「披読授手印の序」は、『末代念仏授手印』の序を捧読する。「授手印の序」を香煙に薫じて頂戴し、披読を省略することもある。脇師は、伝灯師の講読に合わせて、二河白道二祖対面要偈口授の該当箇所を指捧で指示する。正伝法中、灌頂洒水と伝巻頂戴の作法を行う。洒水作法に基づき、散杖で受者代表の頭頂に浄水を灌ぐ。正伝法後に受者全員に灌頂する。教授師は全員に灌頂洒水の思いを指示する。また、伝授作法に基づき、伝灯師は伝巻頂戴の文を誦して血脈囊を捧げ持ち、受者代表は両手を上向けて頂く。教授師は全員に頂戴の思いをして受けるように指示する。この内、授与日課は、日課念仏を誓約するが、省略することがある。

受者一拝—御礼の一拝。教授師は「伝灯師に御礼の一拝」と発声し受者は三唱一礼をする。

授与十念 摂益文 念仏一会 総回向偈 十念

極重悪人の文—維那は「極重悪人 無他方便」の文を唱え、つづいて三唱礼を唱え、大衆は同唱する。

灌頂洒水・伝巻伝授—受者は教授師に従い、釈尊前に一拝し、白道を踏んで本尊前に進む。その間は一唱一下の念仏を唱える。白道上で灌頂洒水と伝巻頂戴の儀を受ける。左脇師灌頂洒水を行い、受者は低頭合掌して受ける。この間、低声念仏する。右脇師は伝授作法をする。偈文は省略し念仏中に授ける。受者は両手で頂戴する。つぎに本尊前に一拝して退堂する。


【参考】福西賢兆監修『図説五重相伝・授戒会』(斎々坊、一九九五)


【参照項目】➡要偈正伝法


【執筆者:福西賢兆】