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霊山浄土

提供: 新纂浄土宗大辞典

りょうぜんじょうど/霊山浄土

釈迦如来報身が『無量寿経』、『観経』、『法華経』などの説法を行う清浄国土耆闍崛山ぎじゃくっせん、すなわち霊鷲山りょうじゅせんのこと。『法華経寿量品に、「阿僧祇劫において常に霊鷲山および余の諸の住処に在るなり。衆生の劫尽きて大火に焼かるると見る時も、わがこの土は安穏にして天・人常に充満せり」、「わが浄土やぶれざるに、しかも衆は焼き尽きて憂怖・諸の苦悩、かくの如き悉く充満せりと見るなり」(正蔵九・四三下)とある。そもそも釈尊出現の世界穢土であり、阿弥陀仏世界とは異なる。『維摩経』仏国品には、「その心浄きに随いて則ち仏土浄し」(正蔵一四・五三八下)といい、浄土の所在が阿弥陀世界に限らないことを示唆した。これを、『法華経』が説く霊山浄土と照らし合わせると、仏教思想史において漸次発達した浄土論の現れの一つであると言える。そのような流れの中、『華厳経』は華蔵世界、『観普賢経』は常寂光土、『大乗密厳経』は密厳仏土と説き、それぞれが西方極楽浄土である阿弥陀世界とは異なる浄土観を展開した。


【執筆者:林鳴宇】