葬具書式
提供: 新纂浄土宗大辞典
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そうぐしょしき/葬具書式
葬送儀礼で用いる道具類(葬具)に記す書式。『法要集』には、死装束と葬列に用いる葬具に要文例を掲載している。①大幡は四本幡ともいい、四流の幡にそれぞれ「雪山偈」を一句ごとに書写し、笹竹につけて葬列に用いる。「諸行無常 是生滅法 生滅滅已 寂滅為楽」(『大悲経』二、正蔵一二・九五一下/『涅槃経』一四、正蔵一二・四五〇上、四五一上)。②「龕の小幡」は龕(棺台)の四方の隅軒の蕨手に龕四流幡(大幡より小さい幡)をかけ、それぞれに摂益文を一句ごとに書写する。「光明徧照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨」(『観経』聖典一・三〇〇/浄全一・四四)。③経帷子は経衣ともいい、この後ろ身裑に『無量寿経』の第三十八願の一部を書写する。五重相伝の受者が着る浄衣にも同文を書く。「応法妙服 自然在身」(『無量寿経』上、聖典一・二三〇/浄全一・一〇)。④下帯は下着のことで、『無量寿経』上の「光明歎徳章」の文を書写する。「若在三途 勤苦之処 見此光明 皆得休息 無復苦悩」(聖典一・二三七/浄全一・一三)。⑤頭陀袋は僧が乞食・托鉢する頭陀行を行うときに首にかけて携帯するものであったが、後に死者が死出の旅路の用に六文銭と穀物を入れる袋となった。半斎供養で唱える文を書写する。「百味飲食 自然盈満 雖有此食 実無食悩(『無量寿経』上、聖典一・二四四/浄全一・一六)。⑥脚絆は脛に巻く布をいい、仏の歩く姿を表現する文を書写する。「足履其上 陥下四寸 随挙足已 還復如故」(『無量寿経』上、聖典一・二四七/浄全一・一八)。ただし、手甲の書式は示されていない。⑦冠は天冠ともいい、三角形の額あてで烏帽子の代わりにつけるという。観音菩薩の天冠を観察する文を書写する。「其天冠中 有一立化仏 高二十五由旬」(『観経』聖典一・三〇二/浄全一・四四)。⑧上帯は帷子を締める帯をいい、阿弥陀仏の五智を書写する。「仏智 不思議智 不可称智 大乗広智 無等無倫最上勝智」(『無量寿経』下、聖典一・二八〇/浄全一・三三)。⑨六道牌は六道塔婆ともいう。菩薩の利他の徳相の文を書写する。「興大悲 愍衆生 演慈弁 授法眼 杜三趣 開善門」(『無量寿経』上、聖典一・二一七/浄全一・三)。⑩天蓋は葬列をする際に棺にさしかけるもの。「是宝盍中 映現三千 大千世界 一切仏事」(『観経』聖典一・二九五/浄全一・四一)。⑪四門は火屋の四方に設けた門。『諸回向宝鑑』三の「龕堂火屋の図」には、「発心門(東)、修行門(南)、涅槃門(西)、菩提門(北)」とある(七オ)。また棺台に四門を設けたのもある。現在では、幡などを持って葬列することが少なくなり、また死者の好きな着物または浴衣を着せる場合もあり、白帷子などに着替えることもなく、上から掛けることがある。また死装束に経文を記すことも少なくなってきた。なお『浄土宗書式文例集』には白木位牌、野位牌、七本塔婆、十三仏塔婆の書式について次のような記載がある。⑫白木位牌は一般に七七日忌まで用いる仮の位牌。表面「[悉曇:hrīḥ]○〇〇〇〇〇(法名)」。キリクの代わりに「新華台」などと書くこともある。裏面は右に「平成○年○月○日没」、中央に「俗名○〇〇〇」、左下に「行年○歳」。⑬野位牌は通夜・葬儀の祭壇に祀るものではなく、野辺送り(葬列)に用いるもので表面に法名のみを記す。⑭七本塔婆。表面「南無阿弥陀仏為○〇〇〇〇〇(法名)初七日忌菩提」。以下同様に七七日忌まで記す。裏面「入一法句 平成○年○月○日」。裏面には何も書かないこともある。⑮十三仏塔婆は浄土宗ではあまり建てないが、地方により建てる地域もある。「不動明王初七日」「釈迦如来二七日」「文殊菩薩三七日」「普賢菩薩四七日」「地蔵菩薩五七日」「弥勒菩薩六七日」「薬師如来七七日」「観音菩薩百箇日」「勢至菩薩一周忌」「阿弥陀如来三回忌」「阿閦如来七回忌」「大日如来十三回忌」「虚空蔵菩薩三十三回忌」。次のように名号と十二光仏を記すこともある。「南無無量光仏」「南無無辺光仏」「南無無礙光仏」「南無無対光仏」「南無焰王光仏」「南無清浄光仏」「南無阿弥陀仏為○〇〇〇〇〇(法名)菩提」「南無歓喜光仏」「南無智慧光仏」「南無不断光仏」「南無難思光仏」「南無無称光仏」「南無超日月光仏」。⑯六角塔婆は土葬の慣習で埋葬当日に墓地に建てる地方がある。各面左回りに「○〇〇〇〇〇(法名)超生浄土」「念仏衆生」「摂取不捨」「平成○年○月○日」「光明徧照」「十方世界」。
【参考】五来重『葬と供養』(東方出版、一九九二)
【執筆者:西城宗隆】