「四智讃」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:26時点における最新版
しちさん/四智讃
一
金剛界の大日如来を讃歎する声明。因位の金剛薩埵を通して、四仏の四智の徳を讃歎するのでこの名がある。祖山声明には四智梵語讃の呂律の二曲と四智漢語讃一種の合わせて三種が相伝されている。浄土宗に伝承するのは恵隆本により「唵嚩曰羅 薩怛嚩 僧蘖囉賀 嚩曰羅囉 怛曩摩弩怛藍 嚩曰羅 達摩誐耶奈 嚩曰羅 羯麼 迦嚕嚩婆」とされる。また漢語讃は総本山知恩院蔵版『声明』により「金剛薩埵摂受故 得為無上金剛宝 金剛言辞歌詠故 願成金剛勝事業」とされる。「(唵)、金剛薩埵が摂受する故に、金剛宝は無上なり。金剛の言詞をもって歌詠する故に、金剛業をなすものとなれ」という意。四智梵語讃は不空訳の『金剛頂一切如来真実摂大乗現証大教王経』(正蔵一八・二二三上)と輸婆迦羅訳『摂大毘盧遮那成仏神変加持経入蓮華胎蔵海会悲生曼荼攞広大念誦儀軌供養方便会』(正蔵一八・六八上)を典拠とし、四智漢語讃は『大日経持誦次第儀軌』(一八・一八五上)と金剛智訳『金剛頂瑜伽中略出念誦経』(正蔵一八・二四八上)を典拠とする。知恩院では江戸時代の正月法要、台徳院殿法要、御忌の晨朝法要等に唱えられていた。現在使うのは四智梵語讃(呂曲)であり、呂曲・黄鐘調・乙様で唱えられる。『法要集』によると葬儀式の「作梵・合鈸・引導」の作梵として唱えるように指定されている。
【参照項目】➡四智
【執筆者:大澤亮我】
二
増上寺(縁山流)の声明では梵語讃のみが伝承されている。「唵嚩曰 羅薩 恒嚩 僧孽囉 賀 嚩曰囉 怛曩 摩弩 恒藍 縛曰羅達摩誐耶 奈 縛曰羅 羯麼迦嚕 嚩婆」。法要の導入部で唱える。黄鐘調(基音A音)出音宮の曲である。縁山流の独特のユリに加えて「ユリ上」「(鶯の)谷渡り」「暁烏」等の技巧が用いられる代表的な声明である。法要中、曲全体を唱える本讃と、「オンバサ ラサ アタンバ シギャラ カ」の句頭のあとで「バサラ アゲルマギャロ ハバ」と唱え途中部分を省略する半讃と、主に庭儀式に「オンバサ ラサ アタンバ シギャラ カ」の句頭部のみを唱える庭讃の三種類の唱え方があり、いずれも列立して唱える。葬儀式の作梵として用いられる他、御忌会、五重相伝会の要偈道場(伝灯師転座中)などで唱えられている。大鏧(引鏧)を縁山独自の打ち鳴らし方で打ち、終了後に鈸鐃を三八八六六と打つ。
【参照項目】➡四智
【執筆者:廣本榮康】