「四十八願」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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2018年3月30日 (金) 06:26時点における最新版
しじゅうはちがん/四十八願
阿弥陀仏の本願・別願。阿弥陀仏が、因位であった法蔵菩薩としての修行中に、世自在王仏により二百一十億の諸仏国土を見せられ、その中からとくに勝れたものを選び取って建てた四八の誓願のこと。「六八の弘誓」ともいう。
[異訳諸本の願数]
本願の数は『無量寿経』では四八であるが、〈無量寿経〉諸本においては必ずしも同一ではない。『大阿弥陀経』『平等覚経』では二十四願、『無量寿如来会』では四十八願、『無量寿荘厳経』では三十六願、梵文では四十七願、蔵訳では四十九願となっている。
[各願の名称]
四十八願それぞれに名称を付けて解釈することは、新羅の法位が最初であり、義寂・憬興や日本では智光・良源・静照・真源・澄憲などによって行われている。これらは道光『無量寿経鈔』の四十八願釈において紹介されている。道光も独自に名称を付しており、浄土宗ではそれによっている。以下の通り。 ①無三悪趣②不更悪趣③悉皆金色④無有好醜⑤宿命智通⑥天眼智通⑦天耳智通⑧他心智通⑨神境智通⑩速得漏尽⑪住正定聚⑫光明無量⑬寿命無量⑭声聞無数⑮眷属長寿⑯無諸不善⑰諸仏称揚⑱念仏往生⑲来迎引接⑳係念定生㉑三十二相㉒必至補処㉓供養諸仏㉔供具如意㉕説一切智㉖那羅延身㉗所須厳浄㉘見道場樹㉙得弁才智㉚智弁無窮㉛国土清浄㉜国土厳飾㉝触光柔軟㉞聞名得忍㉟女人往生㊱常修梵行㊲人天致敬㊳衣服随念㊴受楽無染㊵見諸仏土㊶諸根具足㊷住定供仏㊸生尊貴家㊹具足徳本㊺住定見仏㊻随意聞法㊼得不退転㊽得三法忍
[各願の分類]
四十八願を分類することは、浄影寺慧遠『無量寿経義疏』上に「中において合して四十八願有り。義要には三、文別に七有り。義要には三とは、一には摂法身願、二には摂浄土願、三には摂衆生願なり」(浄全五・二七上)とするのが最初である。慧遠は第十二・第十三・第十七の三願を摂法身願、第三十一・第三十二の二願を摂浄土願、他の四三願を摂衆生願とする三種に分類した。吉蔵・憬興も同じく三種に分類するが、吉蔵は願浄土として三願、願得眷属として四二願、願得法身として三願と分類している。憬興は慧遠の説を受けているが、それぞれ求仏身願・求仏土願・利衆生願としている。慧遠はさらに、四十八願が説かれる順序と、この三分類を組み合わせて、以下のように七段に分類している(『無量寿経義疏』上、浄全五・二七)。(丸数字は願数を示す。以下同)
(1) | ①~⑪ | 摂衆生 |
(2) | ⑫~⑬ | 摂法身 |
(3) | ⑭~⑯ | 摂衆生 |
(4) | ⑰ | 摂法身 |
(5) | ⑱~㉚ | 摂衆生 |
(6) | ㉛~㉜ | 摂浄土 |
(7) | ㉝~㊽ | 摂衆生 |
憬興も同様の分類を行っている。聖冏は『釈浄土二蔵義』二二において、これを「対文次第の七重」としている。聖冏はさらに「義類不次第の七重」をあげ、とくに摂衆生願の四三願を摂凡夫願と摂聖人願に大別し、摂凡夫願をさらに摂自国願と摂他国願の二つに分ける。また摂聖人願を摂声聞願と摂菩薩願に分け、摂菩薩願をさらに摂自国願と摂他国願に分類している(図)。
(一)摂法身願 | ─⑫、⑬、⑰ | ||
(二)摂浄土願 | ─㉛、㉜ | ||
(三)摂衆生願 | ┬摂凡夫願 | ┬摂自国願 | ─①~⑪、⑮、⑯、㉑、㉗、㊳、㊴ |
│ | └摂他国願 | ─⑱~⑳、㉝~㉟、㊲ | |
└摂聖人願 | ┬摂声聞願 | ─⑭ | |
└摂菩薩願 | ┬摂自国願─㉓~㉖、㉘~㉚、㊵、㊻ | ||
└摂他国願─㉒、㊱、㊶~㊺、㊼、㊽ |
[善導・法然の四十八願解釈]
善導は『般舟讃』において「四十八願茲に因って発す。一一の誓願は衆生のためなり」(浄全四・五三〇下)と言って、誓願はすべて衆生のために発されたものであるとしている。法然は『選択集』六において『法事讃』上の「弘誓多門にして四十八なり。偏に念仏を標して最も親しとす」(浄全四・八下)を引いて、「故に知んぬ。四十八願の中に、すでに念仏往生の願を以て、本願の中の王と為す」(聖典三・一三五)と第十八願が四十八願の中心であるとした。
【参考】坪井俊映『浄土三部経概説 新訂版』(法蔵館、一九九六)、藤田宏達『原始浄土思想の研究』(岩波書店、一九七〇)、同『浄土三部経の研究』(同、二〇〇七)、同「無量寿経—阿弥陀仏と浄土—」(『浄土仏教の思想』一、講談社、一九九四)、香川孝雄『浄土教の成立史的研究』(山喜房仏書林、一九九七)、恵谷隆戒『浄土教の新研究』(同、一九七六)
【執筆者:曽和義宏】