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宗脈・戒脈

提供: 新纂浄土宗大辞典

2018年8月22日 (水) 06:39時点における192.168.11.48 (トーク)による版

しゅうみゃく・かいみゃく/宗脈・戒脈

浄土宗には、一宗の根本義を伝える宗脈と、戒を伝える戒脈の二つの伝法がある。宗脈とは、浄土宗義の肝要を師匠から弟子相伝することをいい、戒脈とは、浄土宗に伝承されている戒を師匠から弟子相伝することをいう。脈とは血脈のことで、師匠から弟子へ法を伝えてゆく譜脈、即ち伝法の系譜をいい、宗脈においても譜脈を立て、戒脈においてもそれを立てるのである。浄土宗教師になるためにはこの両脈を相承する必要がある。

[宗脈]

法然は『選択集』一において、六大徳相承浄土五祖の二つの相承について述べている。聖冏はこの意を受けて『顕浄土伝戒論』に「凡そ浄土一宗に於いて二の血脈有り所謂る宗脈と戒脈と是れなり。若し宗を伝ふるの時は必ず以て戒をも伝ふ。此の条は殊に浄土一宗の学者彼此一同なり」(浄全一五・八九六上)と述べている。また同『浄土真宗付法伝』(続浄一七・三〇四上~六上)には、宗脈について八祖相承六祖相承の二説を述べ、八祖とは馬鳴めみょう龍樹天親世親)・流支(菩提流支)・曇鸞道綽善導源空法然)をいい(経巻相承)、六祖とはインドの四祖(馬鳴龍樹天親・流支)から馬鳴龍樹を除いた天親以下の六祖(知識相承)を挙げている。またこの両種の相承には口訣くけつ相承の他に依用えゆう相承のあることを述べ、口訣相承では総ての相承の関連を説明し得ないが依用相承に依れば可能であるとする。法然当時の宗脈に関わる譜脈は現存しないが、聖光は『授手印』序に「三心五念の宝玉をば、稟承ほんじょう源空に伝う。幸いなるかな、弁阿血脈を白骨に留め」(聖典五・二二三)と述べているので、口訣の相伝のみでなく血脈譜のあったことが想定される。『授手印』の奥には源空・弁阿(聖光)・然阿良忠)三代の血脈が記され、然阿から寂慧(良暁)に伝わり、これが伝伝相承されて鎌倉本山血脈となり、また瓜連うりづら常福寺および増上寺血脈となる。瓜連常福寺の了誉聖冏に至って、この授手印血脈が敷衍拡充されて五重血脈となり、この五重血脈が宗脈としてそれ以来五百余年授受されて今日に及んでいる。

戒脈

円頓戒では梵網相承蓮華台相承)と法華相承霊山直授相承)との二種の戒脈を立てる。梵網相承蓮華台上盧舎那仏・釈尊弥勒・二十余菩薩・羅什・南岳慧思・天台智顗・章安・智威・慧威・玄朗・湛然道邃どうすい最澄次第し、法華相承釈尊より直ちに慧思・智顗相伝し、以後、章安・智威・慧威・玄朗・湛然・道邃・最澄次第するのである。最澄以後、慈覚・長意・慈念・慈忍・源心・禅仁・良忍叡空法然次第するのを慈覚大師正流とし、法然より聖光良忠次第する鎮西流や、法然信空湛空正覚次第する二尊院流、湛空恵尋・恵顗・伝信・恵鎮と次第する黒谷流法然証空浄音次第する西山流などをはじめ、そのほか法勝寺流、元応寺流、三鈷寺流、廬山寺流、など種々の戒脈がある。現在浄土宗では知恩院増上寺伝宗伝戒道場が開かれ宗脈と共に戒脈も伝授している。


【参考】恵谷隆戒『円頓戒概論』(大東出版社、一九四二)、林彦明「伝統血脈と五重伝書」「円頓戒脈の横竪」(『専修学報』五・六、一九三八・一九三九)


【参照項目】➡血脈宗脈化他門伝五重自証門伝円頓戒


【執筆者:金子寛哉】