結縁五重
提供: 新纂浄土宗大辞典
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けちえんごじゅう/結縁五重
浄土宗で檀信徒に宗義を五つの順序にしたがって相伝する法令、儀式のこと。化他五重、在家五重、または単に五重、五重相伝とも称される。五重相伝は本来出家のために行われるものであり、明徳四年(一三九三)聖冏が弟子聖聡に伝えたのにはじまる。一般(在家)に対しては文明七年(一四七五)三河大樹寺愚底が岡崎城主松平親忠に相伝したのが最初とされる。その後次第に広く行われるようになる一方、元和の「浄土宗法度」第四条「在家の人に対し五重血脈を相伝せしむべからざる事」をはじめ、寛文一一年(一六七一)檀林評定の定書、貞享三年(一六八六)増上寺発布の定書、享保七年(一七二二)知恩院より末寺へあてた法度など、たびたび在家に対する五重相伝を禁じたり制限を加えたりしたが、その勢いはとどまらなかった。江戸時代中期より祐天、観徹、定月、妙瑞、在禅、音澂、隆円、法洲、的門などにより伝書が作られ、次第に作法、伝目、伝法の型が整えられてきた。中でも江戸末期に隆円の著した『浄業信法訣』は後世の指針となっており、内容は要偈道場分九箇条(①訓導、②懺悔三帰、③披読授手印序文、④道場表顕、⑤伝法由来、⑥要偈細釈、⑦伝授作法、⑧授与日課、⑨念仏回向)、密室道場の安心相承五箇条、附伝四箇条(①焼香伝〔附塗香触香〕、②座具伝、③自証往生伝、④授手印伝、⑤十念伝、附①仏祖対面伝、②亡者回向伝、③睡時十念伝、④気息伝)から成る。もと七日間の法会であり、普通、前六日間を前行、最終日を正伝法とする。前行では勧誡師の講説、礼拝、勤行を行い、また、五重未相伝の亡者に対する回向、贈五重も行われる。正伝法は前伝要偈道場と後伝密室道場の二つの道場にて伝灯師より伝授される。密室道場では受者に伝巻(血脈)を授与し、誉号を授ける。近時は期間を五日間に短縮して開かれることが多い。
【参考】「結縁授戒と化他五重」(浄土宗布教伝道史編纂委員会編『浄土宗布教伝道史』「第三章 江戸時代」、浄土宗、一九九三)、「現代における『結縁五重相伝会』のありかた」(『教化研究』一五、浄土宗総合研究所、二〇〇四)
【執筆者:日下部謙旨】