「請来目録」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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しょうらいもくろく/請来目録
求法のため入唐・入宋した僧によって、帰朝の際に請来された数多くの文物(三蔵・儀軌・仏像・仏画・仏具など)の一々を記録した目録。将来目録ともいう。古くは奈良時代の道昭、道慈、玄昉らが入唐して多くの典籍を請来したが、それらの目録は現存しない。平安以後の請来目録としては、最澄『伝教大師将来目録』(台州録および越州録)、空海『御請来目録』、円仁『入唐新求聖教目録』、円行『霊巌寺和尚請来法門道具等目録』、恵運『恵運禅師将来教法目録』、常暁『常暁和尚請来目録』、円珍『智証大師将来目録』、宗叡『新書写請来法門等目録』がよく知られているが、のちに安然はそれら入唐八家(最澄、空海、円仁、円行、恵運、常暁、円珍、宗叡)によって請来された文物の各目録を、三灌頂部から諸図像部までの二〇部に分類整理した上で、『諸阿闍梨真言密教部類総録』二巻(元慶九年〔八八五〕)として編集した。これによって九世紀以前の日本に、どのような密教典籍が請来されていたのかを知ることができ、また当時の日本の各宗派にどのような文物が必要とされていたのか、そしてどれだけの質量の請来品が舶載されていたのかが明確になり、日本の仏教界における学的水準をも間接的に把握することができる。例えば円仁の『入唐新求聖教目録』(承和一四年〔八四七〕)には、当時の天台宗において最澄請来典籍の不備を補うべく、密教の経典や儀軌が多数請来されていることや、道綽『安楽集』、善導『法事讃』、法照『五会法事讃』など浄土教の文献も含まれていること、さらに曼荼羅、絵画、白銅印泥塔、金銅五鈷金剛鈴、金銅五鈷金剛杵などの仏具類から、五台山の土石二〇丸までもが請来されていることを知ることができる。なお「請来」を「将来」と区別する場合もあり、前者は要請に応じて持ち来たるという意味が強いが、請益将来の略語とする説もあり、厳密に区別されているわけではない。
【執筆者:齊藤隆信】