十楽
提供: 新纂浄土宗大辞典
じゅうらく/十楽
『往生要集』大文第二「欣求浄土門」に説示される、浄土に往生した者が受ける一〇種の快楽のこと。浄土十楽ともいう。①聖衆来迎楽。臨終時に苦しみがなく、阿弥陀仏や観音・勢至菩薩が来迎して浄土に引接してくれる。②蓮華初開楽。蓮華のつぼみの中に寄託して浄土に往生し、その蓮華が初めて開くとき、清浄の眼を得て浄土の荘厳を見ることができる。③身相神通楽。三二の勝れた特質(三二相)を持つ身と天眼などの五種の神通力を得ることができる。④五妙境界楽。浄土では、五感の対象となるものすべてが、清らかで勝れたこよなきものとなっている。⑤快楽無退楽。浄土では、行者がもはや退転することなく楽を受けることができる。⑥引接結縁楽。縁故のある人びとを浄土に迎えとることができる。⑦聖衆俱会楽。多くの聖者たちと浄土で会うことができる。⑧見仏聞法楽。仏を見ることや、仏の法を聞くことが容易にできる。⑨随心供仏楽。心のままに自由に阿弥陀仏や十方の諸仏を供養することができる。⑩増進仏道楽。浄土の勝れた環境によって自然に仏道を増進して、ついにはさとりを得ることができる。『往生要集』では、『群疑論』五には浄土の三〇種の利益が、『安国鈔』では二四種の楽があることをあげて、浄土がいかに素晴らしいところかを説き、欣求浄土を勧めている。また、十楽は和歌の題材ともなり『新古今集』「釈教歌」に「十楽の心」を詠んだ歌が集載されている。さらには、源信に仮託した『十楽和讃』なども有名である。
【参照項目】➡十楽和讃
【執筆者:和田典善】