暗夜道場
提供: 新纂浄土宗大辞典
あんやどうじょう/暗夜道場
暗闇で懺悔する式。五重相伝の正伝法、授戒会の正授戒の前日に行う。懺悔道場の別称、また懺悔道場の一部。道場内を消灯し、または暗幕などで暗闇にするので、道場の表示としてこの名がある。点灯したときには、光明道場ともいう。懺悔道場では懺悔して信機の深心を促し、暗夜道場では三毒煩悩具足の愚鈍の身を体得し、光明道場では称名念仏によって阿弥陀仏の光明を受けて罪障消滅が証明される。身心清浄となって正伝法を受けるために、この式が別開される。『法要集』では懺悔会と称して、懺悔道場の記述がない。現在では多くの地域で行われているが、地域によってその作法が異なり、この暗夜道場で暗夜説法(暗説)が行われることがある。『浄土苾蒭宝庫』上には、「この夜は一層身心清浄にして傍人の指揮に従い懺悔すべし。道場無灯恰も黒暗の如くならしめ、帳読して受者一人ずつ入堂着座せしめ、一同揃えたるとき喚鐘一打殿司鐘声を待て、後門より一時に数火を点じ、忽ち白日の如くならしむべし。於茲読経礼拝説教畢」(九四ウ)とある。『法要集』の懺悔会は、道場を消灯し、受者が浄紙に懺悔文・姓名・年令を自筆し、各自持参の上、順次焼香礼拝ののちに自筆を机上に置き所定の位置に着座する(この間摂心念仏)。増上寺では浄紙を広懺悔の訓読中に浄焚する。暗夜道場は各自一本の線香を持って暗闇の道場へ一人ずつ入堂する作法が多い。近江方式による懺悔道場は、無明長夜・六道輪廻の表示、手引き引摂・摂取不捨の表示、懺悔細釈を暗夜道場の三箇条の口伝として暗説している。大和方式による懺悔道場は、無明長夜・六道輪廻の表示、二河白道二尊遣迎の表示、懺悔細釈の暗夜道場口伝三箇条を説いている。また地域によっては懺悔式のみ行うこともある。五重相伝・授戒会の別行の礼拝念仏が本来「懺悔の筵」を中心に行われ、正伝法・正授戒を受ける身となるという意識に基づいて行われる法要である。
【参考】藤堂俊章「五重相伝について」(『教化研究』一、一九九〇)、『布教羅針盤』(浄土宗、二〇〇二・二〇〇三)
【参照項目】➡懺悔道場
【執筆者:大澤亮我】