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日常勤行式

提供: 新纂浄土宗大辞典

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にちじょうごんぎょうしき/日常勤行式

浄土宗において日常(普段)に行う勤行法要)のこと。またその式次第のこと。浄土宗ではわが身の現世後世について安心と立命とを確立するため、阿弥陀仏に救いを求め、浄土往生の大事を誤らないようにし、伝灯祖師に感謝し、また先祖の有縁の先亡精霊に対して追善回向する意で誦経念仏功徳を捧げる儀式を勤行という。勤行とは勤め励み行うことで、自らが如実な信と行とに精進することである。その精進する相(すがた)が勤行である。俗に「おつとめ」ともいい、また看経かんきん諷経ふぎんともいう。『無量寿経』下に「何ぞ世事を棄てて、勤行して道徳を求めざる」(聖典一・二六一/浄全一・二四)とあるように、もともとは仏道修行を勤め励むことである。のちには、仏前で誦経する意味となった。経を読むことが中心であるが、それとともに仏を礼拝し、仏の徳を讃歎し、仏を供養するものである。インドにおいてすでに釈尊在世時代に昼三回夜三回すなわち六時勤行が行われていたことは経論に示されており、この六時勤行作法がやがて中国に伝わり、東晋の世に慧遠廬山において六時に行い、善導は『往生礼讃』(六時礼讃)を作って日没初夜中夜後夜晨朝日中六時に礼仏勤行せよと作法および行儀の心得を勧めた。浄土宗法要は、日常勤行定期法要臨時法要特殊法要に分類している。また、法要の趣旨によって、①引導回向法要②報恩の法要③自己(自行)の法要祈願法要特殊法要等に分類され、そのすべての法要の基礎になっているのが日常勤行式である。これは五種正行のいずれも自ずと実践できる式次第となっている。正定業としての念仏信心が深められていくように企図されており、そのための順序次第が整えられ、方法や作法が定められている。法然六時勤行を勤めていたことは明らかであり、当時は法式も天台流の勤行を行っていたと考えられるが、晩年は専修念仏のみであった。後、存応増上寺一二世の法灯を継ぎ、徳川家康帰依を受け、天下泰平のために関東に十八檀林を建てて学徒教養の道場に充て、徳川家の菩提所の関係上、寺門興隆と教線拡張に尽力、ことに門下の廓山了的の両名は南都北嶺など他宗の精髄を集め、法服、制度、法式等を整頓し、ここに浄土宗法式の基礎を定めたと伝えられている。安政四年(一八五七)、増上寺学頭であった観随は、増上寺はじめ諸寺の学識経験者と協議を重ね、古今の勤行式を折衷して『蓮門六時勤行式』を著して勤行式を制定し、浄土宗勤行式として全国統一をめざした。勤行式としての式次第構成からみて、この『蓮門六時勤行式』が現行の「日常勤行式」の起点に立つものといえる。現在の勤行法もこれら先徳の手によってなされたもので、その内容はいずれも善導の『法事讃』の規範に準じて編成され、五種正行を通じて行うように配列せられ、序分正宗分流通分の構成の巧妙さは各宗推賞の的となっている。

勤行六時勤行が原則であるが、中夜後夜を除いた四時の勤行(祐麟『浄業課誦』)、あるいは昼三時、朝・夕の二時など簡略化されて勤めている。『法要集日常勤行式は、昼間の晨朝日中日没の三座立ての法要になっている。

晨朝 日中 日没
入堂 入堂 入堂
香偈 無言三拝 無言三拝
三宝礼 献供呪
奉請 献供偈
歎仏偈 十念
広懺悔
懺悔偈
十念
開経偈 開経偈 開経偈
誦経 誦経 誦経
回向文 回向文 回向文
十念 十念 十念
晨朝礼讃 日中礼讃 日没礼讃
御法語 御法語 発願文
摂益文 摂益文 摂益文
念仏一会 念仏一会 念仏一会
別回向 別回向
総回向偈 総回向偈 総回向偈
十念 十念 十念
無言一拝 無言一拝 総願偈
退堂 退堂 三唱礼
送仏偈
十念
退堂

次は一座の法要にまとめた差定を示す。原則として偈文の順番の差し替えはないが、例外として礼讃だけは開経偈の前に入れてもよいことになっている。また、回向文御法語は適宜選ぶ。

[日常勤行差定例] 礼拝
       入堂
   ┌先、 香偈 中品礼
   │次、 三宝礼 上品礼
   │次、 四奉請または三奉請 中品礼
序分 │次、 歎仏偈 中品礼
   │次、 広懺悔 下品礼浅揖
   │次、 懺悔偈 下品礼浅揖
   └次、 十念 下品礼深揖
   ┌次、 開経偈 下品礼浅揖
   │次、 誦経浄土三部経 下品礼浅揖
   │次、 回向文(取捨選択 下品礼浅揖
   │次、 十念 下品礼浅揖
   │次、 礼讃六時礼讃 上品礼
正宗分│次、 御法語(取捨選択 下品礼浅揖
   │次、 摂益文 下品礼浅揖
   │次、 念仏一会 下品礼浅揖
   │次、 別回向 下品礼浅揖
   │次、 総回向偈 下品礼浅揖
   └次、 十念 下品礼深揖
   ┌次、 総願偈 中品礼
   │次、 三唱礼または三身礼 上品礼
流通分│次、 送仏偈 中品礼
   └次、 十念 下品礼深揖
    退堂

【参考】宍戸寿栄『浄土宗法儀解説』(大超寺、一九六六)、香月乗光『浄土宗日常勤行の話』(浄土宗、一九九五)、宍戸栄雄『一遇』(日常勤行式)、村瀬秀雄『日常勤行式の解説』(法然上人鑽仰会、一九六〇)、『法要集』、浄土宗総合研究所編『浄土宗日常勤行式の総合的研究』(浄土宗総合研究所、一九九九)


【参照項目】➡勤行別時勤行式五種正行


【執筆者:岡本圭示】