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「葬具書式」の版間の差分

提供: 新纂浄土宗大辞典

 
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2018年3月30日 (金) 06:28時点における最新版

そうぐしょしき/葬具書式

葬送儀礼で用いる道具類(葬具)に記す書式。『法要集』には、死装束しにしょうぞく葬列に用いる葬具に要文例を掲載している。①大幡四本しほん幡ともいい、四流の幡にそれぞれ「雪山偈」を一句ごとに書写し、笹竹につけて葬列に用いる。「諸行無常しょぎょうむじょう 是生滅法ぜしょうめっぽう 生滅滅已しょうめつめっち 寂滅為楽じゃくめついらく」(『大悲経』二、正蔵一二・九五一下/『涅槃経』一四、正蔵一二・四五〇上、四五一上)。②「がん小幡」は龕(棺台)の四方の隅軒の蕨手わらびてに龕四流幡(大幡より小さい幡)をかけ、それぞれに摂益文を一句ごとに書写する。「光明徧照 十方世界 念仏衆生 摂取不捨」(『観経』聖典一・三〇〇/浄全一・四四)。③経帷子かたびらは経衣ともいい、この後ろ身裑みごろに『無量寿経』の第三十八願の一部を書写する。五重相伝の受者が着る浄衣にも同文を書く。「応法妙服おうぼうみょうぶく 自然在身じねんざいしん」(『無量寿経』上、聖典一・二三〇/浄全一・一〇)。④下帯したおびは下着のことで、『無量寿経』上の「光明歎徳章」の文を書写する。「若在三途にゃくざいさんず 勤苦之処ごんくししょ 見此光明けんしこうみょう 皆得休息かいとくくそく 無復苦悩むぶくのう」(聖典一・二三七/浄全一・一三)。⑤頭陀袋ずだぶくろは僧が乞食托鉢する頭陀行を行うときに首にかけて携帯するものであったが、後に死者が死出の旅路の用に六文銭ろくもんせんと穀物を入れる袋となった。半斎供養で唱える文を書写する。「百味飲食ひゃくみおんじき 自然盈満じねんようまん 雖有此食すいうしじき 実無食悩じつむじきしゃ(『無量寿経』上、聖典一・二四四/浄全一・一六)。⑥脚絆きゃはんは脛に巻く布をいい、仏の歩く姿を表現する文を書写する。「足履其上そくりごじょう 陥下四寸かんげしすん 随挙足已ずいこそくい 還復如故げんぶくにょこ」(『無量寿経』上、聖典一・二四七/浄全一・一八)。ただし、手甲の書式は示されていない。⑦冠は天冠ともいい、三角形の額あてで烏帽子の代わりにつけるという。観音菩薩の天冠を観察する文を書写する。「其天冠中ごてんがんちゅう 有一立化仏ういちりゅうけぶつ 高二十五由旬こうにじゅうごゆじゅん」(『観経』聖典一・三〇二/浄全一・四四)。⑧上帯は帷子かたびらを締める帯をいい、阿弥陀仏五智を書写する。「仏智ぶっち 不思議智ふしぎち 不可称智ふかしょうち 大乗広智だいじょうこうち 無等無倫最上勝智むとうむりんさいじょうしょうち」(『無量寿経』下、聖典一・二八〇/浄全一・三三)。⑨六道ろくどうはい六道塔婆ともいう。菩薩利他の徳相の文を書写する。「興大悲こうだいひ 衆生みんしゅじょう 演慈弁えんじべん 法眼じゅほうげん 杜三趣とさんじゅ 開善門かいぜんもん」(『無量寿経』上、聖典一・二一七/浄全一・三)。⑩天蓋葬列をする際に棺にさしかけるもの。「是宝盍中ぜほうこうちゅう 映現三千ようげんさんぜん 大千世界だいせんせかい 一切仏事いっさいぶつじ」(『観経』聖典一・二九五/浄全一・四一)。⑪四門火屋ひやの四方に設けた門。『諸回向宝鑑』三の「龕堂火屋の図」には、「発心門(東)、修行門(南)、涅槃門(西)、菩提門(北)」とある(七オ)。また棺台に四門を設けたのもある。現在では、幡などを持って葬列することが少なくなり、また死者の好きな着物または浴衣を着せる場合もあり、白帷子などに着替えることもなく、上から掛けることがある。また死装束に経文を記すことも少なくなってきた。なお『浄土宗書式文例集』には白木位牌、野位牌七本塔婆十三仏塔婆の書式について次のような記載がある。⑫白木位牌は一般に七七日忌まで用いる仮の位牌。表面「[悉曇:hrīḥ]○〇〇〇〇〇(法名)」。キリクの代わりに「新華台」などと書くこともある。裏面は右に「平成○年○月○日没」、中央に「俗名○〇〇〇」、左下に「行年○歳」。⑬野位牌通夜・葬儀の祭壇に祀るものではなく、野辺送り(葬列)に用いるもので表面に法名のみを記す。⑭七本塔婆。表面「南無阿弥陀仏為○〇〇〇〇〇(法名)初七日忌菩提」。以下同様に七七日忌まで記す。裏面「入一法句 平成○年○月○日」。裏面には何も書かないこともある。⑮十三仏塔婆浄土宗ではあまり建てないが、地方により建てる地域もある。「不動明王初七日」「釈迦如来二七日」「文殊菩薩三七日」「普賢菩薩四七日」「地蔵菩薩五七日」「弥勒菩薩六七日」「薬師如来七七日」「観音菩薩百箇日」「勢至菩薩一周忌」「阿弥陀如来回忌」「阿閦如来回忌」「大日如来十三回忌」「虚空菩薩三十三回忌」。次のように名号十二光仏を記すこともある。「南無無量光仏」「南無無辺光仏」「南無無礙光仏」「南無無対光仏」「南無焰王光仏」「南無清浄光仏」「南無阿弥陀仏為○〇〇〇〇〇(法名菩提」「南無歓喜光仏」「南無智慧光仏」「南無不断光仏」「南無難思光仏」「南無無称光仏」「南無超日月光仏」。⑯六角塔婆土葬の慣習で埋葬当日に墓地に建てる地方がある。各面左回りに「○〇〇〇〇〇(法名)超生浄土」「念仏衆生」「摂取不捨」「平成○年○月○日」「光明徧照」「十方世界」。


【参考】五来重『葬と供養』(東方出版、一九九二)


【参照項目】➡葬具葬列


【執筆者:西城宗隆】