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死装束

提供: 新纂浄土宗大辞典

しにしょうぞく/死装束

死者に着せる衣装のこと。現在では既製品を用いることが多いが、かつては死後急いで縫われるものであった。麻または木綿で仕立てた白い単衣ひとえであり、必ずしも経文が書かれるわけではないが、経帷子きょうかたびらと呼ばれることが多い。着せる際には、生者との差異を表すため、襟を「左前」に合わせて着せる、裏返しに着せる、帯を立結びにする、足袋や草履を左右逆に履かせるなど着方を変えることも広く見られる。死装束を仕立てる際には地域ごとに差異があり、仕立てる人数は複数で行うものとされ、また縫い方では、糸尻を結ばないなどがあり、これは「糸尻を結ぶと死者の魂がいつまでもこの世に残ってしまうから」などとされている。着物のほかに、笠や三角布などの被り物、また手甲、脚絆、足袋、草履、頭陀袋ずだぶくろなどが用意され、杖が添えられた。死者の身仕度や持ち物は旅装束を意味し、「あの世への旅立ち」を象徴的に表している。


【参考】中村ひろ子「死者の衣服のフォークロア」(国立歴史民俗博物館編『よそおいの民俗誌 化粧・着物・死装束』慶友社、二〇〇〇)


【参照項目】➡経帷子往生衣


【執筆者:名和清隆】