施餓鬼
提供: 新纂浄土宗大辞典
せがき/施餓鬼
餓鬼に飲食を施すこと。その代表的な典拠である『救抜焰口餓鬼陀羅尼経』は、阿難が、ある餓鬼から、膨大な数の餓鬼に飲食を施すことができればその餓鬼は苦しみの身を離れて天界に生じ、阿難は延命を得るが、できなければ阿難は絶命し餓鬼道に堕ちるという実現不可能な脅迫をされることに始まる由来を伝え、阿難に対し、釈尊が少量の飲食を無限大に変じる無量威徳自在光明殊勝妙力という陀羅尼(変食陀羅尼に同じ)を授けるとする。釈尊はこれを誦すれば実現不可能な施しも実現されると諭し、さらに人々が、浄水を入れた器に盛った飲食にこの陀羅尼や諸如来の名号を誦して加持を施し浄地にそそげばそれで施しとなり、無限大の数に及ぶ餓鬼が飽満して天界に生じるばかりか、百千俱胝に及ぶ多くの如来を供養するに匹敵する功徳が生じ、寿命延長、増益色力、善根具足などの利益も得られると説く。施餓鬼は餓鬼の抜苦与楽を物語るものとして了解されるが、この密教経典は、少量の供物でも陀羅尼を誦する加持により供物が無限大に増大し布施波羅蜜の完成がもたらされるとの教説を展開させる。したがって施餓鬼においても、いかに布施波羅蜜の完成を目指すかが問題とされている。
【執筆者:袖山榮輝】