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観察経典

提供: 新纂浄土宗大辞典

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かんざつきょうてん/観察経典

仏・菩薩とその国土観察、観想を主題として大乗思想を説く経典のこと。これを観察経典とよぶのは、五念門観察門、あるいは五種正行観察正行における観察を語源として用いたものであろう。『観仏三昧海経』一〇巻・東晋・仏駄跋陀羅ぶっだばっだら訳(正蔵一五)、『観普賢菩薩行法経』一巻・劉宋・曇摩蜜多どんまみった訳(正蔵九)、『観虚空菩薩経』一巻・同(正蔵一三)、『観無量寿経』一巻・劉宋・畺良耶舎きょうりょうやしゃ訳(正蔵一二)、『観薬王薬上二菩薩経』一巻・同(正蔵二〇)、『観弥勒菩薩上生兜率天経』一巻・劉宋・沮渠京声そきょけいせい訳(正蔵一四)の六つの経典をさして六観経観経類、観念経類、観仏経典類などの呼称がある。これらの経典にはいくつかの共通した特色がある。まず経題に「観」の字を冠することで、これが観経観察経、観念経とよばれる理由である。六経はサンスクリット原典、チベット訳を欠き漢訳のみが伝わり、しかも六経に異訳が残っていない。『観経』にはウイグル語訳の断片があるが、これは漢訳を翻訳したものとされている。六経の翻訳者は中央アジアの縁故者である。この中『観経』の成立地をめぐっては、インド、中央アジア、中国の三種の撰述説があり、『観仏三昧海経』にも中央アジア撰述説がある。以下六経の観仏説についていえば、『観仏三昧海経』は釈尊および七仏、十方仏の観仏を説き、特に釈尊の観相に詳しく仏身と仏心の二種の三昧を説いている。『観普賢経』は法華三部経の一つで仏滅後の衆生がいかに一実の境界を悟るかがテーマであり、普賢菩薩の観仏と六根懺悔による成仏を説いている。『観虚空蔵経』は犯戒ぼんかい衆生慚愧して三五仏と虚空菩薩の名を称え、礼拝すれば、仏菩薩衆生の前に現前し、懺悔によって罪業は永滅すると説いている。『観経』は浄土三部経の一つで、阿弥陀仏西方極楽浄土の観想を一三に分けて説いている。『観薬王薬上経』は二菩薩の名を聞く者の功徳とその陀羅尼を説き、未来世衆生のために二菩薩を観ずる法を明かしている。『観弥勒上生経』は弥勒三部経の一つで、弥勒兜率天への上生がテーマであり、阿逸多弥勒)の往生を待って五百億の天子が一生補処菩薩供養するために美事な宮殿と諸堂を造作、荘厳する。このような兜率浄土の観想と上生を、比丘大衆に勧めている。


【参考】藤田宏達『原始浄土思想の研究』(岩波書店、一九七〇)、同『浄土三部経の研究』(岩波書店、二〇〇七)、月輪賢隆『仏典の批判的研究』(百華苑、一九七一)、大南龍昇「『観無量寿経』の成立と禅観経典」(正大紀要八〇、一九九五)


【執筆者:大南龍昇】