箇条伝法
提供: 新纂浄土宗大辞典
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かじょうでんぼう/箇条伝法
聖冏が『五重指南目録』において制定した宗脈五十五箇条中から重要な伝目のみを残して大幅に簡略化された伝法のこと。応仁の乱などで世相が大きく乱れ、長期間に渡る修学が困難な状況となったため、増上寺九世の貞把と同一〇世存貞が、伝法期間の短縮化に伴って伝目の再整備を進め、定めた。貞把と存貞は、檀林における五年間の修学を経た上で、三七日間の加行(初七日が前行、後二七日が正行)によって浅学衆のための略式伝法である五重自証門を相伝することを浅学相承、また浅学相承後にさらに相当年数(一五年間)の修学を経た出家者に対して宗脈化他門として宗脈と円戒と璽書を相伝することを碩学相承とした。なお、宗脈化他門における円戒と璽書の伝目については、現在の伝法と一致するか否かは明らかではない。このように貞把と存貞による伝法改革によって、聖冏が『五重指南目録』で制定した内容は浅学相承と碩学相承に二分化され、また伝目も五重自証門と宗脈化他門とに整理された。この改革は乱世にあって、ともかく一寺を継承し得る人材の輩出が目的であった。五重自証門について、道誉流ではこれを五重八箇条(一説では五箇条)とし、①塗香触香伝、②焼香伝、③座具伝、④五通切紙伝、⑤三国伝来口授心伝、⑥三国三代三国二代伝、⑦助証歟伝、⑧授手印伝と制定した。一方、感誉流では五重九箇条とし、①触香伝、②座具伝、③五重自証門伝、④授手印伝、⑤五通五箇伝、⑥面上伝、⑦三種病人伝、⑧未回心声聞伝、⑨気息之伝と制定した。また宗脈化他門については、道誉流ではこれを①都部伝、②宗脈化他門伝、③形状形名伝、④凡入報土伝、⑤傍人伝、⑥気息伝、⑦三種病人伝、⑧引導伝、⑨助証歟伝、⑩後夜念仏伝、⑪授手印伝の十一箇条(一説では九箇条)と制定した。一方、感誉流では①宗脈以上化他門之伝、②都部之伝、③授手印之伝、④総口伝、⑤凡入報土伝の五箇条、そして①引導伝、②洒水霊供伝、③開眼発遣伝の添口伝三箇条と制定した。このように宗脈五十五箇条の伝目を大幅に簡易化した貞把と存貞は、宗脈五十五箇条の相伝、つまり大五重の実施も念頭に置いていたものと考えられる。この貞把と存貞による箇条伝法化という伝法改革以後、各檀林や師家が貞把と存貞の作成した箇条伝法の伝目をもとにして随意に伝目を操作するようになり、近世には道誉流や感誉流のほかに、幡随意流などの箇条伝法も制定されるようになっていった。なお現在では、感誉流の箇条伝法をもって浄土宗の伝法とし、これを継承している。
【参考】鈴木霊真『浄土宗伝法各流伝目集』(私家版、一九五二)、恵谷隆戒「近世浄土宗伝法史について」(『浄土教の新研究』山喜房仏書林、一九七六)
【参照項目】➡伝法、伝目、五十五箇条口伝、浅学相承・碩学相承、感誉流伝法、道誉流伝法
【執筆者:柴田泰山】