「法華経」の版間の差分
提供: 新纂浄土宗大辞典
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ほけきょう/法華経
初期大乗仏教の代表的経典の一つ。ⓈSaddharmapuṇḍarīka-Sūtra。「白蓮のように清浄ですぐれた教え」の意味。数本のサンスクリット本が伝えられているほか、唐の智昇(六五八—七四〇)編纂の『開元釈教録』(『開元録』)によれば六本の漢訳があったとされ、竺法護訳『正法華経』(一〇巻)、闍那崛多および笈多訳『添品妙法蓮華経』(七巻)、そして鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』(七巻または八巻)が現存している。このうち鳩摩羅什訳がもっとも流布しており、『法華経』はその通称。紀元前後に成立したとみられ、当時の出家教団と在家の仏教信者集団との対立を背景として、『般若経』や『維摩経』などが声聞・縁覚の二乗の不作仏を主張するのに対し、『法華経』二十八品の前半十四品(迹門)では、舎利弗らの声聞衆が授記されるだけでなく、「妙法華経の一偈一句を聞き、乃至、一念も随喜する者には、我、皆な記を与え授く」(法師品、正蔵九・三〇下)と述べるなど、徹底した一切皆成の一乗思想が宣揚される。また、後半十四品(本門)の如来寿量品では、仏陀伽耶において成道した釈尊こそが、久遠(五百塵点劫)の昔に成仏した本仏に外ならないことが明らかにされるなど、大乗仏教の仏身観を考察する上でも、非常に重要な経典である。中国でも、日本でも、数多くの注釈書が作られたが、日本では、最澄によって天台宗が開かれて以降、天台智顗の『法華玄義』『法華文句』が最も大きな影響力を持った。また、『法華経』では三界火宅喩などの物語性に富んだ譬喩が数多く用いられており、仏教のみならず、文学や絵画などの諸方面にも多大な影響を与えた。
【所収】正蔵九、岩波文庫『法華経』上・中・下
【参考】坂本幸男編『法華経の思想と文化』(平楽寺書店、一九六五)、藤井教公『法華経』仏典講座六・七(大蔵出版、二〇〇一)、横超慧日『法華思想の研究』(平楽寺書店、一九七一)
【参照項目】➡本門・迹門
【執筆者:木村周誠】