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火宅

提供: 新纂浄土宗大辞典

かたく/火宅

苦しみや煩悩にさいなまれて安住できない三界を、燃えさかる家に喩えたもの。とくに『法華経譬喩品の三車火宅の譬(正蔵九・一二中~一三上)が有名。無量の財富を有する長者がいたが、その家は古く朽ちていた。あるとき、その家が火事になり、長者は門外へ退避できたが幼い子供たちは遊びに興じて、逃げ出すように呼びかけても出てこない。燃えさかる朽ちた家の危険が分からないため、危機的状況に気付いていないのである。一度は腕力で救い出そうと考えたもののさまざまな状況を考慮し、長者方便で門の外に羊車ようしゃ声聞乗)と鹿車ろくしゃ縁覚乗)、牛車ごしゃ菩薩乗)という子供たちが欲しがっていた三車(三乗)があると呼びかけた。その声に誘われて子供たちは我先にと燃えさかる家より門外へ出てきたので助かることができた。しかし、長者が用意していたのは三車ではなく、もっとすばらしい大白牛車だいびゃくごしゃ(一仏乗)であった。この譬えの長者とは仏であり、火宅に遊ぶ子供たちは衆生を表している。


【参照項目】➡三界


【執筆者:横田善教】