称讃偈
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうさんげ/称讃偈
浄土宗声明の一つ。特に増上寺流の声明。縁山流声明の特色の一つである押・当があり、その入門編ともいえる重要な偈。忍澂の『浄業課誦』の中で、称讃偈としての形式が独立して示されて以後、誦経後の称讃として用いられている。初重・二重・三重に分かれ、いずれも前段の四念仏(南無阿弥陀仏を四句)と後段の偈から構成されている。四念仏は同じ旋律であるが、偈の部分はそれぞれの旋律を持つ。初重は〈双調・出音宮〉と示され調子が双調(基音G)、二重は〈黄鐘調・出音宮〉で黄鐘調(基音A)、三重は〈盤渉調・出音宮〉で盤渉調(盤渉調B)と変化して唱えられている。初重の四念仏に続く偈の部分は善導『般舟讃』に出る「釈迦如来真報土 清浄荘厳無勝是 為度娑婆分化入 八相成仏度衆生」(浄全四・五三〇上/正蔵四七・四四八中。釈迦如来の真の報土は、清浄にして荘厳の無勝是れなり。娑婆を度せんがために、化を分って入る。八相成仏して衆生を度す)の四句で、句頭部分に「七ツ押」と呼ばれる独特の唱法がある。なお『法要集』ではこれを称讃偈として紹介している。初重は降誕会、涅槃会、成道会、葬儀式などで用いられ、増上寺では通常の法要にも誦経後の称讃として用いている。二重の偈の部分も善導の『般舟讃』に出る「瓔珞経中説漸教 万劫修功証不退 観経弥陀経等説 即是頓経菩薩蔵」(浄全四・五三〇上。『瓔珞経』のなかには漸教を説く。万劫の修功は不退を証す。『観経』『弥陀経』等の説は、即ちこれ頓経菩薩蔵なり)の四句を唱える。三重の偈の部分は善導の『観経疏』に出る「願以此功徳 平等施一切 同発菩提心 往生安楽国」の四句を唱える。三重は句が「後伽陀」と同文であることから、「後伽陀」の代わりに用いられることもある。
【執筆者:廣本榮康】