称名正因
提供: 新纂浄土宗大辞典
しょうみょうしょういん/称名正因
西方極楽浄土へ往生するための主要な条件は、阿弥陀仏の名号を称える口称念仏であるということ。『無量寿経』第十八願文に基づき、「乃至十念」を「下至十声」と解し、「至心信楽欲生我国」を「至誠心・深心・回向発願心」の三心と解して口に仏の名を称える念仏こそが阿弥陀仏の本願に相応する行であると主張する善導は、三心具足の称名念仏こそが阿弥陀仏の願意に則し、衆生の機根に則した唯一の行法であるとしている。法然はこれを受け継いで、阿弥陀仏がありとあらゆる修行方法を選捨したうえで唯一選択した本願念仏こそが万機を摂する行であると結論づけ、称名一行の修行生活を全うしている。『選択集』三において「余行を以て往生の本願とせず、ただ念仏を以て往生の本願と為たまえる」(聖典三・一一三/昭法全三一七)ことを詳細に論じ、「勝劣・難易」という二つの観点から称名念仏こそが往生の正因であることを明らかに示している。
【執筆者:渋谷康悦】