有相浄土
提供: 新纂浄土宗大辞典
うそうじょうど/有相浄土
姿や形のある浄土のことをいい、姿や形のない無相浄土に対する語である。浄土宗で説く浄土は有相浄土である。『阿弥陀経』には「これより西方十万億の仏土を過ぎて世界あり、名づけて極楽という」(聖典一・三一六/浄全一・五二)と説かれており、世親・曇鸞は『往生論』および『往生論註』において極楽浄土を三種二十九句荘厳の世界としている。道綽は『安楽集』で浄土の有相性について「これ相を取るといえども、まさに執縛とすべきにあらず。またこの浄土にいう所の相とは、すなわち無漏の相、実相の相なり」(浄全一・七〇三中)といい、無漏の境界にあっての有相であることを明らかにしている。善導は『観経疏』において「末代罪濁の凡夫の相を立てて心を住するすら尚得る事あたわず、何ぞ況んや相を離れて事を求めんをや」(聖典二・二六九/浄全二・四七中)と述べ、阿弥陀仏が無相の境界に入れない凡夫のために、善巧方便として有相の浄土を構えたことを示している。浄土宗における有相浄土とは、凡夫救済のために仏が建立した世界であり、有漏ではなく無漏の勝義の世界を意味する。
【執筆者:曽根宣雄】