即身成仏
提供: 新纂浄土宗大辞典
そくしんじょうぶつ/即身成仏
真言宗の根本教理で、父母所生のこの身に仏のはたらきが顕れ、そのまま速やかに仏となること。現象世界を法身大日如来の顕現と捉える真言宗の世界観においては、我々の存在・活動もまたその顕現に他ならず、手に印を結び、口に真言を唱え、心に仏を観念することで我々と仏の身・口・意のはたらきが融通無礙にとけ合う三密加持の状態となり、そこに成仏が実現されるという。何生もかけた修行の末に成就する三劫成仏に対して主張される。ただし法然は『念仏大意』において「釈尊の在世の時すら即身成仏におきては竜女のほかいと有り難し」(聖典四・三四二)と述べ、この教えの実効性を認めない。なお、そもそも衆生と仏とが不可分であるとする真言宗のいわば汎神論的な世界観・人間観からは「仏のもとに生まれ仏のもとに還る」といった人間観が成り立つが、指方立相と凡夫往生を旨とする浄土宗の立場とは対極的といえる。
【資料】空海『即身成仏義』
【参考】末木文美士『日本仏教史—思想史としてのアプローチ—』(新潮社、一九九二)
【参照項目】➡三密
【執筆者:袖山榮輝】