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汎神論

提供: 新纂浄土宗大辞典

はんしんろん/汎神論

宇宙、世界自然に存在する一切と神が同一であるとする立場。その発生については、①マナなど非人格的な力ないし呪力の観念の延長としてみられるもの、②人格的な神の信仰との関連からみられるもの、の二種がある。中国における道(タオ)、インドにおけるリタ(天則)・ブラフマン(梵)・アートマン(我)、ギリシアにおけるディケー(義)・モイラ(運命)・プネウマ(気息、霊)などが①の例である。②の立場は、世界が特定の神の体や産出物とみなされることに汎神論の発端をみる。この種の立場は未開民族の宗教にすでにあらわれるが、インド、イラン、ギリシアなどの宗教では、神からの世界の産出、男女両性の神の交合からの世界の展開が語られる。しかし宗教的実在が人格的か非人格的かの区別は必ずしも絶対的ではない。一般に汎神論では、神と世界との関係は、神を強調して神が一切であるとする方向と、逆に一切が神であるとする方向に分けられるが、歴史上の諸例はこの両極の間に位置づけられる。


【参考】R・オットー著/久松英二訳『聖なるもの』(岩波文庫、二〇一〇)、柳宗悦『宗教とその真理』(叢文閣、一九一九)


【参照項目】➡一神教


【執筆者:挽地茂男】