説教
提供: 新纂浄土宗大辞典
せっきょう/説教
経典や教義を講説し、仏の教法を説いて人々を開導すること。多少意味内容を異にしているものもあるが、説経、説法、唱導、法語、談義、勧化、法話等さまざまな異称をもつ。わが国では仏教伝来とともに広く行われ、落語、講談などの話芸にも大きな影響を与えた。法然は選択本願念仏の義を勧め、聖光、良忠は法然の説いた念仏の真意の顕彰につとめた。以後、近世に至る諸師は教学と布教に力を注いだ。江戸時代には無智の談義僧が現れ、名聞利養のための不浄説法をなす者が続出したため、元和条目等によりこれを禁じ、浄土宗布教のあり方を示した。またこの時代、牛秀は『説法式要』を著し、その後捨世派に属する称念、忍徴、関通、無能および、法岸、法洲、法道の大日比三師、貞極、徳本、隆円等にすぐれた活動のあとを見る。また琉球におもむいた袋中も生涯、教化伝道にあたった。明治時代になり、廃仏毀釈と諸政一新のため布教活動は一時停滞したが、思想界、社会状態の大変動に対応して組織的な布教活動の必要に迫られ、布教教化に関する規定を発布してその推進をはかった。岸上恢嶺は『説教帷中策』を著し、讃題・譬喩・因縁・結勧の四段に分ける説教組織を示した。この時代に活躍した人に福田行誡、養鸕徹定、黒田真洞、中嶌観琇、北条的門、吉岡呵成等が見られる。明治末頃より再び説教の盛況期を現し、多くの著名布教師が輩出した。椎尾弁匡、矢吹慶輝、友松円諦等によるラジオ放送や講演形式の新しい形の説教が人びとに共感を与え、文書伝道、視聴覚伝道等各種の伝道教化も行われ今日に至っている。現在の説教は、讃題・序説・法説・譬喩・因縁・合釈・結勧の構成によって行われている。
【参考】関山和夫『説教の歴史的研究』(法蔵館、一九七三)、浄土宗布教伝道史編纂委員会編『浄土宗布教伝道史』(浄土宗、一九九三)
【執筆者:日下部謙旨】