発願
提供: 新纂浄土宗大辞典
ほつがん/発願
願いをおこすこと。誓願を立てること。Ⓢkṛta praṇidhānaなどの訳語。願いには、さとりを求める心や、修行して浄土を完成させること、あるいは衆生を救済することなどがある。浄土教では、特に回向発願心のことをいい、浄土に生まれたいと願う者が、すべての善根の功徳をふりむけて往生したいと願うことをいう。また『阿弥陀経』には「もし信ずることあらん者は、まさに発願して、かの国土に生ずべし」(聖典一・三二一/浄全一・五五)とあり、極楽往生の願いをおこして、極楽に生ずべきであると説かれている。善導は『観経疏』玄義分で「まず大衆を勧めて願を発して三宝に帰せしむ」(聖典二・一五九/浄全二・一上)といい、良忠はこれについて「発願とは菩提心および往生の願を発す」(浄全二・八二上)と釈している。また「南無と言うは、すなわちこれ帰命、またこれ発願回向の義」(聖典二・一八二/浄全二・一〇上)と説き、「南無」そのものに発願回向の意味があるとする。
【執筆者:大屋正順】