三宝
提供: 新纂浄土宗大辞典
さんぼう/三宝
仏教徒が帰依すべき三つの宝、すなわち仏・法・僧のこと。仏とはさとりを開いたもの、法とは仏によって説かれた教え、僧とはその教えに従って生活する集団である。Ⓢtri-ratnaあるいはⓈratna-trayaⓅratana-tayaⓉdkon mchog gsumなどの訳語で、仏法僧と訳されることもある。仏・法・僧を宝とすることについては、『宝性論』で、この三つが①世の中に稀有なものであり、②清らかで、③力を備え、④出世間を荘厳し、⑤最上の存在であり、⑥移り変わらないという六点を具えるから、宝とすると説く(正蔵三一・八二六中~下)。またこの三宝の解釈について、同体三宝や別体三宝、また住持三宝というものがある。同体三宝とは一体三宝ともいい、仏・法・僧の三つが異ならないとする解釈である。これは大乗の『涅槃経』(『北本涅槃経』正蔵一二・四五六中~下、『南本涅槃経』同六九八下)や『維摩経』(正蔵一四・五七八上)を典拠とし、「仏は、すなわち是れ法、法はすなわち是れ僧なり」(正蔵一二・四五六中)というように、仏・法・僧が実は本性として等しいことを主張するものである。別体三宝は別相三宝ともいい、同体三宝とは逆に、仏と法と僧とがそれぞれ別々の自性をもつと理解するものである。住持三宝とは、後世に仏教を伝え広めるための三宝で、この場合の仏とは仏像、法とは経巻等に記された教え、僧とは出家し袈裟を身につけた者たちが集まった教団を指す。このように三宝についての解釈はいくつかあるが、三宝に帰依すること、すなわち三帰依が、仏教徒となるための初めの一歩であることは、時代や国を問わず広く認められる。すなわち最初期の仏教から今に至るまで、三宝に帰依することは、最も重要で最も基本的な仏教における信仰であり続けている。
【資料】『大乗法苑義林章』六
【執筆者:石田一裕】