新扶選択報恩集
提供: 新纂浄土宗大辞典
しんぷせんちゃくほうおんしゅう/新扶選択報恩集
二巻。道光撰。元亨二年(一三二二)成立。『選択集』を批判した明恵の『摧邪輪』ならびに『摧邪輪荘厳記』に対して反駁したもの。内容は「祖師の徳行を扶く」と「選択の文義を扶く」の二門から成っており、『摧邪輪』と『摧邪輪荘厳記』の文を挙げて、その主張に対して反論する形を取る。「祖師の徳行を扶く」では、法然の在世滅後を通じて、諸宗の高僧が法然に帰依したことを挙げて、明恵の非難が不当であることを述べ、「選択の文義を扶く」では、主に菩提心の解釈を挙げて、三心も菩提心であるとする明恵に対して、道光は「大師の意、三心と菩提心とその体各別」と理解する立場から、『摧邪輪』における『選択集』批判は「自力と他力、成仏と往生の差別を知らず、二門混乱の邪難」(浄全八・五四三上)であるなどとして反駁する。道光は、『和語灯録』『漢語灯録』を編纂したが、両書からの援用は極めて少ない。
【所収】浄全八
【参考】清水澄「『新扶選択報恩集』の立場」(『浄土宗学研究』二四、一九九七)
【執筆者:米澤実江子】