一念三千
提供: 新纂浄土宗大辞典
いちねんさんぜん/一念三千
智顗『摩訶止観』に説かれる、心の一念と一切法の関係。地獄界から仏界までの十界はそれぞれの中に他の九界も具えているとし、あわせて百界となる。また、これらは相・性・体・力・作・因・縁・果・報・本末究竟等の十如是を有するため百界千如となり、さらに五蘊・衆生・国土の三世間にわたっているのであるから百界千如は三千種の世間を有すると、一切法のあり方を説く。そして、それらはすべて一念の中に具わっていると説き、さらに心と一切法が不可分の関係にあるとしている。天台宗の重要な教義であるが、『摩訶止観』五上(正蔵四六・五四上)の中で一度説かれるのみで、はたして智顗の説なのかどうかは明らかになっていないものの、後に湛然によって宣揚された。
【執筆者:横田善教】