釈浄土二蔵義
提供: 新纂浄土宗大辞典
2018年3月30日 (金) 06:26時点における192.168.11.48 (トーク)による版
しゃくじょうどにぞうぎ/釈浄土二蔵義
三〇巻。『釈浄土二蔵頌義』『二蔵頌義』『頌義』ともいう。聖冏述。聖冏が著した『二蔵二教略頌』を自ら注釈した書。聖冏は、『略頌』著述二年後の至徳二年(一三八五)、弟子である聖聡の請いに応じて、『略頌』一六六各頌に詳細な注釈を施した。本書は、法然を淵源とする浄土宗に代々伝えられてきた法門を組成化した浄土教概論であり、近世・近代に至るまで宗内で影響を与え続けた重要書と言える。そこに示されるのは、全仏教の中における浄土門の位置づけである。『略頌』では善導の二教二蔵義により、全仏教を声聞蔵・菩薩蔵に大別し、声聞蔵を声聞乗・辟支仏乗・菩薩乗に分け、菩薩蔵に漸頓二教があるとする。菩薩蔵の漸教に初分教十地、後分教六位六十一地があるとし、頓教に性頓と相頓とを分別する。さらに相頓教に内因・外縁・往生品位の三門を立て、内因に安心・起行・作業、外縁に総願・別願・五種増上縁、往生品位に三輩・九品を挙げ、それぞれ詳細に図示し、浄土門は菩薩蔵頓教であり、頓中の頓であると結論する。全三〇巻のうち、第一巻にある釈迦・弥陀・十方諸仏と世親・菩提流支の三仏二祖に稽首する理由の中の二祖について、世親は正依の『往生論』の作者であり、菩提流支は浄土伝来相承の祖であるからとし、流通させたのが善導であるとする。その後は、声聞蔵と菩薩蔵漸教を詳説し、第八巻性頓義の解説では、菩提流支作と伝えられる『麒麟聖財論』を引用して典拠とし、第九、一〇の両巻では、華厳・天台・真言からの浄土門批判に反論し、聖道門は自力分判教であると名づけている。第一一から三〇巻までは、浄土門相頓(大乗他力念仏の教え)を詳説している。聖冏の教学は、本書に見られるように菩提流支の説をよりどころとし、また三輩九品についても「浄土の実義に輩品なし」とする教門実義説を立てるため、事相教門を第二義的に見るかのような印象を与える。それにより、明治以降、二祖三代の教学と異なるとされたが、これは聖冏の随他扶宗といわれる教学体系の一面的理解に基づいているもので、五重伝法の制定に見られる随自顕宗の立場と矛盾するものではないとされる。
【所収】浄全一二
【参考】服部英淳「了誉聖冏の教学体系に関する述作」(浄全一二)
【参照項目】➡浄土二蔵二教略頌
【執筆者:東海林良昌】