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三縁の慈悲

提供: 新纂浄土宗大辞典

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さんえんのじひ/三縁の慈悲

慈悲について、その対象を三つの範疇に分類して取りまとめたもの。曇鸞往生論註』上では世親往生論』に説かれる「正道大慈悲 出世善根生」(聖典一・三二五/浄全一・一九二)の二句を解釈するなか、「慈悲三縁有り。一つには衆生縁、是れ小悲、二つには法縁、是れ中悲、三つには無縁、是れ大悲なり」と指摘し、三つに分類した慈悲に大・中・小を配し、さらに大悲について「出世の善」とし、そこから安楽浄土が生じたのであるから浄土の根であり、それ故「出世善根生」というのであるとする(浄全一・二二四上正蔵四〇・八二八下)。良忠の『往生論註記』二は衆生縁・法縁無縁の三種の慈悲には横竪の義があるとして、竪については凡夫菩薩如来を配し「人執を断ぜざる凡夫衆生有りとおもうが故に起こす慈は是れ生縁なり。人執を断ずる菩薩、法有りとおもうが故に起こす慈は是れ法縁なり。法執を断ずる仏界は法無しとおもうが故に起こすは是れ無縁の慈悲なり」とし、横については「三種の慈悲、共に仏果に約す」(浄全一・二七九上)とした。なお衆生縁・法縁無縁三縁の用例は『大般涅槃経』一五や『大智度論』四〇などをはじめ諸仏典に数多く見られる。


【参照項目】➡無縁の慈悲


【執筆者:袖山榮輝】