無縁
提供: 新纂浄土宗大辞典
むえん/無縁
一
仏・菩薩や仏説との前世も含めた接点の欠如。縁はつて、つながり。有縁の対。法然『三部経大意』に「済度衆生の願は平等にして差別ある事なけれども、無縁の衆生は利益をこうぶる事あたわず」(聖典四・八/昭法全三〇)とある。無縁の衆生は有縁より広範で、成仏からも遠いが、仏にとっては等しく度すべきものである。また供養する人が絶えた状態、あるいはそうした状態になった故人をも指す。用例として無縁塔、無縁仏などがある。
【執筆者:小澤憲雄】
二
対象に差別がなく、絶対平等であること。特定の相手だけでなく、すべての衆生をつつむ仏の慈悲を無縁の慈悲という。『観経』に「一一の光明は、徧く十方世界を照して、念仏の衆生を摂取して捨てたまわず」(聖典一・三〇〇/浄全一・四四)とあり、阿弥陀仏の光明はすべての衆生をわけへだてなく照らしているので無縁であり、念仏する者は、摂益をこうむるので阿弥陀仏と有縁となる。
【参照項目】➡無縁の慈悲
【執筆者:瀧沢行彦】